あたしは決心が付いた。 あたしの表情に気が付いたのか、高彬はあたしに向かって手を差し出す。 そしてあたしはゆっくりとその手を掴もうと 前に出したとき きゃあ! 反対側のほうに引っ張られあたしは力いっぱい抱きしめられる。 一瞬何が起こったのかわか…
あたしの予想通りに後宮が混乱している中、隙を抜けて出るのは難しいことではなかったの。 そしてあたしは右大臣邸へと向かっていった。 当然右大臣邸は警備の者達が物凄い数で見張っているため入るのは容易ではない。 しかし伊達にあたしは普通の姫じゃない…
結局元に戻った状態であたしは自分の部屋に戻った。 もう既に遅かったことに気が付いたのはそれからすぐのことだった。 夕餉が終わり一息がついたころ周りが物凄く騒がしくなっていったの。 沢山の足音が行ったりきたり。 そして警備のものたちが後宮にまで…
一体あの文は何なのか?そして楓さんが言った私達って一体誰なのか? 色々考えそして次に自分がどう動けばいいのか悩み続けた。 楓さんが言った私達って言うのが誰なのかはそう難しいことではなかった。 多分あの小百合という女房のことだと思う。 彼女も鷹…
唐突に自分の目の前に現れた一枚の文。 そこに書かれていたのはとんでもないものだった。 どうすればいいのか分からずあたしはただそれを何度も何度も読み直すことしか出来なかったの。 そして気が付いた。 あれ!? 初めはパニックになっていたため気が付か…
重陽の宴が終わり一段落終わった感じがした。 それと同時にずっと心の奥に隠し持っていた気持ちが急速に大きくなっていく。 あたしはあの眼差しを感じたのに、あたしが愛した人の視線を感じたのに無視をしたの。 重陽の宴では沢山の方たちが集まる。 当然鷹…
楓さんからの挑戦を受けたあたしは必死になってさまざまなことを吸収していった。 昔だったらサボって後宮のメンドクサイ仕来りや貴族の仕組みなんて覚えようとも思わなかったはず。 でも今は違う。 楓さんに喧嘩を売られたから買った。それもあるけど勉強を…
ずっとずっと瑠璃さんの隣にいるのは僕だと思っていた。 瑠璃さんと結婚をしてそして尊敬する東宮様に一生を仕え 京のために一生を捧げるつもりだった。 それが、僕は愛する人と仕える人を両方ともなくしてしまったんだ。 僕は瑠璃さんを東宮様の手から奪う…
売り言葉に買い言葉。 あたしはとんでもないことを口にしていた。 後宮での常識や仕来りをあたしが変えて見せる。 後宮は何百年と続いた古い格式もある。 さまざまな常識や仕来りをこの新参者の女御であるあたしが変えるなんて出来るわけがない。 でも、こん…
楓さんはただ黙ってあたしを見つめる。 何故何も言わずにあたしをただ見つめるだけなのか分からなかった。 でもあたしも楓さんを見つめはじめて気が付いたことがあった。 それは、あたしを見つめるだけじゃなくてあたしがどんな人間なのか探るような視線を感…
あたしは苦しくて苦しくて救いの手を探し握り締めてしまった。 この時、後のことなど全然気にしていなかった。 今の苦しみを取り去って欲しかったから。 でももしあの時あの手を握り締めなかったら あんなことにならなかったかもしれない。 沢山の人たちの人…
あまりにも過酷の中にいたあたしはもう自分ではどうにも出来ないところにまで 追い詰められていた。 苦しすぎて苦しすぎて誰かに助けてもらいたくて仕方がなかった。 あたしは夜の帳が落ち真っ暗な中階を降りてある場所へと向かって行った。 あの時はただ鷹…
僕は最初その噂を耳にした時嘘だと疑った。 瑠璃さんと東宮様は二人とも本当に愛し合って結ばれたのだから。 だから二人の恋のために僕は瑠璃さんを諦めたんだ。 それなのにどうしてもう瑠璃さん以外に東宮様と噂される女性がいるだなんて くだらない噂があ…
あたしは高彬から逃げる形で麗景殿に戻った。 いつもだったら鷹男が自分の部屋に戻るまで庭を眺めていたのに 今日は無理だった。 あたしは自分の部屋に戻ることに躊躇していた。 この麗景殿にはまだ鷹男と楓さんの二人が一緒に夜を過ごしている。 それが頭に…
毎夜毎夜鷹男は麗景殿にやってきて泊まって行く。 本来鷹男を独占しているのは麗景殿の主であるあたしのはずが 実は別の人の元で夜を過ごされている事実をもう今では知らない者がいないくらい 後宮内に知れ渡ってしまっていた。 女御の元に寵のある女性を客…
招かれざる客を預かってから半月が経っていた。 鷹男の寵がある女性だということから麗景殿ではかなり神経質になっていた。 楓という女性が乗り込んできたのですもの。 女房達は警戒してピリピリしていたわ。 けれど彼女は大きな動きを見せることなくずっと…
あまりにも非常識のお願いにあたしの頭の中は思考停止した状態になっていた。 数秒経ってから小萩の驚きの声、悲鳴、そして鷹男に噛みつくような批難の嵐。 こういう時って不思議ね~ 周りのものが大騒ぎをするとかえって自分は冷静になるみたいで鷹男を問い…
後宮内のあの噂をあたしはまだ信じていなかった。 自分で確かめることもせず噂だけに踊らされるなんてそんなことあたしの性分じゃないわ。 いえ、それだけではなくあたしは鷹男を信じることにしたのだもの。 それから小萩に頼んで硯を用意してもらい鷹男に聞…
東宮御所では人払いをして一人自分の思いに耽る一人の男が居た。 東宮御所の主である東宮こと鷹男。 これから起すことに自分の感情が揺れ動き踏ん切りが付かなかったからだ。 私はこのままどこに向かっていくのだろうか? いや、これから起こる事に自分が責…
萩の花の宴が終わりいつもの生活に戻った。 あれから他の女御様からの嫌がらせは殆どなく静かな生活だった。 あたしはあの宴のおかげで他の女御さま達から反感をくらったと危惧していたため 何も起こらないことにホッとしていたの。 まさか、嫌がらせがなか…
他の女御様がこの部屋を出て行きあたし達だけになったの。 それを確認した後更に弘徽殿の女御様は扇をパチンとならした。 その合図で弘徽殿の女御様つきの女房達とあたしつきの女房達が一斉に部屋を出て行く。 その姿を見た弘徽殿の女御様は小萩と弘徽殿の女…
弘徽殿の女御様があたし達の前に現れた。さすがは鷹男の母君さま。堂々とされて若々しく豪快な方だった。沢山の女性達の視線を一手に引きうけられているのに気後れもなく堂々とされていた。周囲をぐるりと眺められた時、あたしと一瞬視線が合った様な気がし…
あたしは女御になった当初はとても幸せだったと思う。 鷹男は毎日のように麗景殿に渡ってくれたし御文も欠かさず私に贈ってくれた。 あたしに凄く気を使ってくれていたんだと思う。 最初だったからなのか、他の女御様からの嫌がらせもなく あたしは後宮生活…
あたしが麗景殿の女御になって2ヶ月が経った。 後宮ではあたしを迎える宴が毎日続いたの。 いろいろな女御様方からの歓迎の宴が開かれ、 そのお礼の宴をあたしからも開かなければならなかった。 だからこの2ヶ月の間宴の毎日であたしはくたくただったの。 …
好きなのにシリーズ第二弾です。 好きなのに~揺れ動く恋心の続編です。 僕の心はどこへ行くんだろう~ 愛する瑠璃さんは僕を選ばず他の方を選んでしまった。 ずっとずっと瑠璃さんと結婚するのを夢見たのに破れてしまったんだ。 僕はそれでいいのか? そう…
私の心の中は嵐のように激情にもまれていた。 瑠璃姫を信じたい気持ちもあるのだが、あの訴えかけるような視線が脳裏を掠める。 思わず内大臣に真相を瑠璃姫に聞いて来るようになどとつい言ってしまった。 本来なら私がじかに瑠璃姫に聞けばいいものを本当の…
あたしは親王さまを御生みした後やっと後宮に戻ったの。 長い事ここを離れたので案外懐かしく思えたの。 そんなに長い事ここにいたわけじゃないくせに ここでは辛い思い出ばかり・・・ でもあたしは意地を張るのは止めたのよ。 だからあたしの気持ちを伝えよ…
私は前に進むことができず、どうしたものかと思い悩んでいた。 周りは喜びに包まれてはいたが私の心はあまり上を向いていなかった。 確かに世継ぎの次期東宮となる親王が産まれたのだ。 そして唯一愛している瑠璃姫が御産みされた御子だ。 嬉しいのだが、あ…
結局あたしはどれだけ考えてもどれだけ考えても高彬への恋心はどこにもなかった。 高彬と燃える様な情熱の恋だったわけじゃない。 たまたまあたしが既成事実を作られそうになった所を 高彬が助けてくれて、そしてその時吉野の里から帰った時 筒井筒の仲にな…
私は帝としか私をみない瑠璃姫を見るのは耐えがたかった。 しかし瑠璃姫への愛情がどれだけ経っても消えないのだ。 あんなに欲した相手は瑠璃姫ただ一人なのだ。 だからこそ瑠璃姫を手放すことなどできなかったのだ。 私は瑠璃姫が藤壺として入内してからほ…