妄想の館

なんて素敵にジャパネスク二次小説(鷹男×瑠璃姫)

止められない初恋4


写真素材 pro.foto

吉野の里を今でも思い出す。

信頼する兄上と初恋の姫君と毎日のように駆け回った。

何もしがらみがなかったあの頃は、毎日あのまま変わることなく

永遠が続くと勝手にそう思っていた。

けれど吉野の里は幻想だった。

父上に京に戻るよう命令されて私と兄上の境遇が一転した。

そう、私達兄弟は跡継ぎ問題の渦中にさらされてしまったのだ。

吉野の里に行ったのは元は兄上の体調が芳しくなかったからだ。

幼い頃からよく熱を出しては臥せっている兄上。

今とは違っていたのだ。

そんな兄上の体調を心配した兄上の母君が吉野の里で

療養を提案され本来ならば兄上一人だけ吉野の里に行くはずだったのに

私は優しい兄上が心配だったため一緒についていくことに

決めたのだ。

そこで、衝撃的な出会いが待っていようとは思いもよらなかったけれど。

 

 

私達兄弟と初めて瑠璃姫と出会ったのは衝撃的だった。

なんと瑠璃姫は猫を助けようと木の上に登ったはいいが

余りの高さに降りられずに泣いているところを発見したことが

出会いだった。

兄上と一緒に吉野の里を探検しようとしていたら女の子の泣き声が

聞こえてくるため近づいたらその現場に遭遇した。

慌てて大人を呼びつけ瑠璃姫はケガもなく難を得た。

そこで驚いたのだ。

大貴族の姫君だということに。

なんて破天荒で尊大な態度なのかと初めは思ったけれど

話をよくよく聞いてみれば、両親と離れ離れになって

寂しい思いをしている小さな女の子だった。

それは私達兄弟も言えることだけれど、私達は瑠璃姫と違い

私には兄上がいる。

だから吉野の里に来ても寂しさなんて感じなかった。

けれど瑠璃姫は違う。

まだ幼いのに必死でその寂しさから逃れようとしているその姿に

私は少しずつ瑠璃姫に惹かれていくのが分かった。

それは兄上も同じだった。

まさか兄弟共に同じ姫君を好きになるとは思いもよらなかったのだ。

けれど私は瑠璃姫を諦めたくなかった。

他は諦められる。

愛するこの小さな姫だけは諦めたくない。

そんな想いで吉野の里から離れ離れになった時

告白をしたというのに幼い瑠璃姫には全く通用しなかった。

そうして京に戻ることになったのだけれど後宮に戻ったら

一気に緊張感が高まっていたのだ。

吉野の里で療養していた兄上は体調が戻り逞しくなって戻ることができた。

その為、私は知らなかったが私を次の東宮にしたいと思っている輩たちが

暗躍をしていたんだそうだ。

それを母上がおっしゃっていた。

母上は私を東宮にしたくないと、跡目争いに巻き込みたくないと

毎日のように泣いて私に縋ってこられた。

そう、私達兄弟は何もしていなくても京に戻れば嫌というほど

跡目争いに巻き込められる運命だったのだ。

父は今上帝、次期東宮はまだ決まっておらず私達兄弟のどちらかだと

そう言われていた。

その上母上は違っていても兄上の母と私の母は姉妹同士。

より一層東宮になるための差別化がはっきりしていなくて緊張感は

高まりすぎていていた。

故に吉野の里から戻ったわたし達兄弟は殆ど会うことさえ叶わなくなった。

唯一会うのは公式の場でのみ。

その時だけ、会話は兄上の方から話しかけてくれて

いつもと変わらず笑顔で私に接してくれる。

それさえも周囲の貴族たちに怒られているのを何度か見ていたが

それでも兄上らしく私はそんな兄上に感謝しか覚えていなかった。

殺伐とする後宮内で息苦しさしか感じないけれど

いつもと変わらぬ兄上の姿に何度救われたか。

 

 

 

 

 

 

 

それから年が何度か越えたときついに東宮が誰なのか決まることになる。

それは、兄上だった。

私達兄弟の母の後ろ盾はほぼ同じ。

血筋は同じで兄上の母君は正妻の子、私の母は側室の子。

それだけの違いであったが東宮は兄上がなるべきだと私は常々思っていた為

兄上が東宮になるのは大賛成であった。

けれど、その気持ちはすぐに霧散してしまう。

それは瑠璃姫が東宮妃となることが決定してしまったからだ。

私の大切な初恋の姫君が兄上の妃になる。

嫌だ!!!!!

私は心底嫌だと思った。

後宮では本音は隠さないといけない。

他のことならなんでも本音は隠せる自信がある。

けれど瑠璃姫のことは違う!

私の愛する初恋の君を兄上に渡したくない!

私は今にでも兄上の元に走り出して瑠璃姫だけはと懇願に行きたくなった。

そのまま私は兄上の元に何も考えずに向かおうと思った矢先

私の部屋に母上がやってきてしまった。

「宗唯!」

私の真っ蒼な表情に驚いた母上が私の元にやってきて部屋から出ようとする

私を引き留めようとするのだ。

「宗唯、あなたは東宮にはなれないのよ。ごめんなさい。

あなたが東宮になりたかっただなんて知らなかったわ!

ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

「違う!!!!」

母上は私が東宮になれなかったことに反論したいと勘違いしてしまっているのだ。

そんな訳はない。

東宮は兄上で決まりでもいい!

けれど瑠璃姫だけは、愛する初恋の姫君だけは私から奪わないでくれ。

そう皆に伝えたくても声にならなかった。

私の目の下には涙が溢れ止まらなかった。

 

 

 

それからしばらくして、私は正気を戻すことになる。

私が瑠璃姫を娶るのは難しい問題だった。

兄上とはお互い後ろ盾が弱かった。

そのため大貴族の後ろ盾は必須だった。

兄上も瑠璃姫のことを愛していた。

その為兄上も必死で行動なさったのだろう。

もし私が瑠璃姫を娶ったとしたら、東宮の地位は私に入ったかもしれない。

東宮は兄上に相応しいのだから諦めるしかないのか・・・・・

だが、虚しい。

愛する姫君を迎えに行くと誓っていたのにこうなってしまえば

瑠璃姫は東宮妃として後宮に迎えられるだろう。

だが、兄上と仲が良い姿を見るのは私には自信がない。

迎えに行くと約束したのにそれが叶わないことは残念だけれど

もう会うことはないだろう。

公式の場でそっと陰ながらあなたを見るのだけはお許しください。

そう私は心に誓ったのだった。

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