好きなのに~揺れ動く恋心6
私の心は荒れていた。
何故なのだろうか?
瑠璃姫には高彬がいた。
だから今回は獲物を得ることが出来なかった。
ただそれだけのことなのに何故気持ちがざわつくのだ。
イラつく・・・・・・・・・・・・・・
あれから三条邸をでてすぐに東宮御所に戻った。
獲物を得る事が出来なかったのだから初めての失敗だ。
だからなのだろうか?
私の気持ちがおさまらないのは・・・・・・・
「東宮様、お呼びでしょうか?」
急に自分の思いに耽っていたというのに、命婦の声で我にかえった。
「何を言っているのだ?」
私は誰も呼んだ覚えはなかった。
どうも私は無意識に扇を広げたり戻したりを繰り返ししていたらしい。
そうしていつの間にか命婦を呼んでしまったのだろう~
私は命婦に用はないことを伝えようと思った。
しかしこのまま部屋から出ずに考え事をしても仕方がない。
だからこそ命婦に伝えたのだ。
今日は馴染みのある女房を夜の清涼殿に呼ぶことに。
そう、私には沢山の女性がいるのだ。
気持ちがおさまらなければおさまるような女を抱けばよいのだ。
そうすればこの想いも忘れるだろう。
意味も分からないこの焦燥感も・・・・・・・・・
私は一番長い事付き合いがある女房の二条を召した。
私よりも10も年上で私の気持ちをよく分かってくれる便利な女だった。
容姿も美麗で教養も高い。しかし身分だけはそう高くはない出。
私の寵が欲しくて、自分の出世のために私に付き合ってくれる女。
お互い恋情で付き合っているわけではなく私利私欲のため。
だからこそこの女を召すのは、私にとって楽な事なのであろう。
「今日は東宮様が私をお呼びになるとは嬉しいですわ。
最近ではあまり女性をお召しになさることが少ないとお聞きしましたわ。
ついに本命の姫君でもおできになられたのかと思いましたわよ」
「馬鹿なことを・・・・私に本命の姫君なんて出来るわけがない。
全ての女性を私は愛しているのだからね。
女性は私になくてはならない人だから。
特に二条、あなたがいないと私は自分が狂ってしまうかも
しれないよ」
私は二条にいいながらドキッとした。
まさか・・・・・・私は過去を振り返る。
そういえば瑠璃姫のもとに行く日だけは他の女を召すことも
渡ることもなかった。
しかし思い出す、瑠璃姫に会いに行くのにどれだけ苦労していたか。
誰にもばれなように気を張って会いに行っていた。
だからこそ疲れて自室に篭ってしまたのだろう。
そうに決まっている。
「東宮様はほんといつも私の気持ちを捕えて離さない。
そんなあなたが素敵ですわね。うふふ・・・」
私は二条と少し会話を楽しみそのまま体を抱こうとしたその時!?
ドン!?!?!?
「きゃあ~」
急に二条の悲鳴が聞こえる。
私は一体何をしたのだ?
そう私は二条を抱こうと体を抱き締めたと同時につき離してしまったのだ
「東宮様~~~~どうされたのです?」
甘ったるい男を誘う色気のある二条を前にしているというのに、
私はその色気を感じる事も出来なかった。
何故か二条を抱き締めたと同時に嫌悪感を抱いたのだ。
「いや、二条すまない、私は疲れてしまったのだろう~
今日はおかえりなさい。」
「東宮様~お待ちくださいまし!
今日はせっかく私をお召しになられたのですもの。
楽しみましょうよ!」
そう言われ私が部屋を出ようと背中を向けているところに
抱きつかれたのだ!
!?!?!?
「離せ!!!!!!!!」
またもや私は二条をつき飛ばした。
「東宮様~~~~」
何故だろう~急に瑠璃姫の姿が私のまぶたの裏に一瞬映るのだ。
寂しそうな瑠璃姫の姿が!
私のいつもと違った雰囲気に二条はいち早く気がついた。
「まさか・・・・・・・・東宮様・・・・・・
本当に本命の方が出来たのでは・・・・」
「ふふ・・・馬鹿なことをいうでない」
そう私がいったと同時に二条が叫んだ。
「東宮様~許しませんわ。
あなたの寵愛は私が一番もっているはずですもの。
女性は皆あなたを好いている事は私も承知いたしておりますわ。
しかし一番は私ですわよね!東宮様~~~~~~~~」
私は一体女の何を見ていたのだろうか?
私が利用しているつもりで実は違っていたことに何故気がつかなかったのだ。
二条も他の女と同じで利用価値がある。
でも二条だけは私を愛していないと踏んで実は
私を愛していた。
何を今さら・・・・・・
「東宮様~まさか違いますよね~一人の女に決めるだなんて。」
ドンドン二条は興奮していく。
皮肉だな。
どうして私は気がつかなかったのだろう。
自分は恋なんて信じない。愛なんてあるわけがない。
そう思っていたのに二条が自分と重なって見える。
そうだ。私はずっと嫉妬していたのだ。
急に高彬が私の目の前に現れたから。
私だけを愛してくれる。
瑠璃姫はそう思ってくれているはず。
なのに結局瑠璃姫は私だけでなく高彬とも愛を育んでいたのだ。
何を今さら気がついてしまったのだ。
今さら遅いというのに
「東宮様~~~ねえ~」
「二条、礼を言う。
お前のおかげで自分の気持ちが今さらながらに分かった。
もうお前のもとに来る事も召すこともないだろう」
「なっ、どういうことなのです?」
「そのままの通りだよ。もう女遊びは止めた。ただそれだけだ。」
私はそういい捨てた。
その後ろでは二条が私を罵っていたがそれはどうでもいいことだ。
しかし今さら気がついてももう遅い。
瑠璃姫をあれだけ傷つけてしまったのだ。
もう忘れるしかないのだろう・・・・・・
私は忘れる事が出来るのだろうか・・・・・・