妄想の館

なんて素敵にジャパネスク二次小説(鷹男×瑠璃姫)

藤壺後宮物語11


もうすぐ唯恵いえ、吉野の君が来られる。

どんなことが起こるのかしら。

 

「律師唯恵お召により参上いたしました。」

「唯恵わざわざここまでよびつけてすまない」

「いえ、そのようなお言葉を頂けただけて誠に嬉しく思います。」

「して、唯恵」

「はい」

「そなたには昔から苦労ばかりかけた。済まないと思っておる。

今まで辛かったであろう。

いろんな政治の思惑により、そなたのことを我が子と認めるわけにはあの頃、

けしてゆるされないことだったのです。」

「光徳院、私はあの頃あなたに拒まれそして絶望感に酔いしれたこともありました。

しかし今ではあの頃の幼き子供ではありません。

年を重ねるごとに院の考えることも理解したくなくても分かるのです。

けれど理屈では分かっても納得できないこともあります。」

「そうか」

「それでは何故に正良親王への出家を私にお命じになったのですか?

あなたは私だけでなくもう一人のわが子である正良親王までも

自分の愛する宗平親王の為にお捨てになった。そういうことですか?」

「それは・・・」

「律師唯恵殿、院がそなたに命じることを

直接お主上にお命じになったわけではないのですよ。」

「それではお主上は、私のことをもう一人の弟は知らずに

出家を命じたことなのでしょう。

なんて残酷な運命を御仏はお命じになられるのか。」

吉野の君は、自分の運命を怨むかのように光徳院に話をするけど、

憎しみの目をしながら、でも、淋しげな肩の震えの姿を見るだけで

あたしの心はとても悲しみに囚われることになった。

「唯恵、これを・・・」

「これは?」

大皇の宮様から守り袋が渡された。

「唯恵それは私があなたが出家した時から

肌身はなさず持つことにしていたものです。」

吉野の君は守り袋を取り出し中身を見た。

さらっと髪の毛が中にはいっていた。

「はっ、これはまさか・・・」

「唯恵殿、それはあなたの幼き頃になくした髪の毛です。」

「院、これを肌身はなさずもって見えたのですか?」

「すまぬ、それぐらいしかお前のことはできることはない。

だからせめてそなたの体の一部でも身に纏いたいと思ったのだ。」

吉野の君の目からは涙が流れ、

そして涙を拭ったあとはすっきりしたかのような表情をした。

「・・・・・・・・・・・・・・・・

もういいのです。

院のあの頃の行動は政治的に仕方がないということを私は知っていたのですから。」

「唯恵、今度はもう一度余生をやり直す気はないか?」

「院、なんのお話でしょうか?」

「私も宗平親王に帝の位を譲った身。

今そなたを私の親王として公にしたとしても、

多少の混乱はあるが問題はないだろう。

唯恵どうであろう。

今更とは思うかもしれぬが我が息子として公表したいと思っておるがいかがしよう。」

「院・・・」

長いこと吉野の君は黙っていた。

「院、喜んでお受けいたしましょう。しかし、

私からもお願いがございます。」

「唯恵もうしてみよ。」

「私は幼き頃から一緒に過ごしたいと思っていた姫君がおりました。

その姫君と一緒に暮らしたいと思っているのです。

瑠璃姫!兄宮の元から離れて私の元にきていただけませんか?」

「吉野の君!」

「唯恵?」

「唯恵殿?」

「それは唯恵・・・」

「父宮が私を我が子と認めてくださった。

それなら昔から一緒に過ごしたかった瑠璃姫と一緒に過ごしたいのです。」

「しかし、その姫は宗平親王の女御であろう。

そのようなことが許されるわけがない。」

「しかし父宮、噂では兄宮と瑠璃姫の仲は余り芳しくない様子・・・

そんな状態で私の愛する姫君を兄宮の元においておきたくないのです。」

「でも唯恵殿、

主上の女御である瑠璃姫をあなたの元に嫁がせることは難しいのでは?」

「瑠璃姫さえよければ、

藤壺の女御様は病に倒れ

そのままお隠れあそばされたということにすればよろしいのでは?

時間がかかりますが今度こそ、

私の元に来てくださるなら時間がかかっても耐えられます。

実際私が今上帝の弟宮として参内すれば混乱はきたします。

ですから私は臣籍にでも下って、瑠璃姫と京を離れて一緒に暮らしたいと思います。」

吉野の君・・・・・・

そんなこと言われてもあたしは戸惑うことばかり。

あたしを無視したお話にいつものあたしなら

怒りに我を忘れる所なのに、あたしはただただ何も発しせず、

心の中がぐるぐるするだけだったの。

そんなあたしに院からお声がかかった。

藤壺の女御、唯恵はこのようなことを言っておるがそなたの考えはどうなのか?」

「恐れながら私は吉野の君が今上帝の弟宮ということを今知ったばかり、

吉野の君とは幼き頃の筒井筒の仲とはいえ今返事をすることはできません。」

「そうであったか。この話は後日ということでいいだろう。

私の方から帝に話す。

唯恵、そなたには悪いがそれまでは接触しないように。」

「心得ました。」

あたしは悩み続けた。

沢山のことを知ってどうすればいいのか考えが纏まらない。

「瑠璃姫、私はあなただけがほしい!

だから兄宮のもとから離れて私の元に来てほしい。

あなたに急にこの話をしたのは性急だったかもしれません。

しかし、今までならとうに諦めていた夢が叶うかもしれないのです。

ですからつい、院にお願いしてしまいました。瑠璃姫私の元に来てくれませんか?」

「吉野の君ごめんなさい。今日は色んなことを知りすぎて混乱してるの。

だから今結論をお話することはできません。だから・・・」

「分かりました。瑠璃姫の思うようにしてください。

私はあなたの幸せだけを願っているのですから。」

「うん」

あたしはどうすればいいのか考えなくてはいけない。

吉野の君と一緒に暮らすか、それとも・・・

 

 

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