妄想の館

なんて素敵にジャパネスク二次小説(鷹男×瑠璃姫)

藤壺女御物語15

吉野の君はなんて言ったの?

兄宮?

えっ?

だって吉野の君の兄宮といえば今上帝ただ一人のみ。

鷹男がそうだったなんて・・・信じられないわ。

どうしてあたしに黙っていたのよ。

あたしの気持ちが整理しきれていない中

初めて兄弟対決が始まる。

 

「お主上、私の出自についてはもうお聞きだと存じます。

ですから私の筒井筒の仲の愛おしい姫君をお返しください。」

「駄目だ唯恵!それだけは許さない。

瑠璃姫は私の女御なのだから無理だ。」

「兄宮は藤壺の女御様を大事に扱っていないとお聞きしております。

だからいいのではありませんか?」

「それは・・・」

「兄宮は私が今までどれだけのものを犠牲にしてきたのか分かってないようですね。

私は兄宮の地位が欲しいわけではないのですよ。

ただ、私は幼き頃の愛おしい姫君と静かに暮らしたい。

ただそれだけの願いなのです。

それなのに兄宮は私の唯一ほしいと思った姫でさえ取り上げるおつもりか!」

「唯恵済まぬ、お前の気持ちは痛いほどわかる。

しかし私とて同じこと。

瑠璃姫こそ唯一愛する姫なのだから、だから瑠璃姫をお前に渡すことなどできぬ。

頼む、瑠璃姫のことは諦めてくれ」

鷹男はなんと吉野の君の前で頭を下げたの。

今上帝が普通軽々しく頭を下げることなど許されないことなのに

あたしのために頭を下げてくれる。

その姿に胸が熱くなる。

そんな二人をあたしはただ見つめることしかできなかった。

どれくらい経ったのかあたしは気が付かない。

でも吉野の君が声を出したの。

「兄宮が頭を下げたとしても、私は瑠璃姫を諦めません。

しかし、このままいっても平行線をたどるばかりです。

ここは私たちの愛する姫君に決めてもらうのはどうでしょうか?」

「それはそうなのだが・・・」

急に矛先があたしに向けられ、あたしはただ吃驚するしかなかった。

でもいうしかない。

心が騒いで仕方がないうえまだ混乱があたしの頭の中を駆け巡る。

あたしは答えた。

今すぐに返事を出すことはできないことを。

だから二人にはあたしの答えが出るまで待ってくれるように頼んだの。

 

 

 

 

 

 

あたしは藤壺で物思いに悩む。

あたしにとって帝は雲の上の人だった。

最初から沢山の女性に囲まれ、すでに女御様は二人お見えだった。

あたしは身分が高くても鄙びていて、最初から上を目指す気分でもなかった。

物語を見れば男性の浮気ばかりが目立ち、

実際に父さまも、あたしの母がなくなってすぐに新しい北の方を迎えた。

女は人妻になっても辛い思いをしているのは義理の母から新妻レクチャーで

学んでいたもの。

ほとほと結婚に夢なんて見ることなんてできない。

あたしだけを愛してくれる人と幸せになりたい。

その思いは貴族の娘に生まれてから無理なことも理解していた。

甘やかされて育ったことも分かっていたから女御にもなった。

後宮の世界は物語の世界と同じでやっぱり怖くてなじめないものだった。

だからこそ、帝を意識しないように無意識な行動に陥ってたんでしょうね。

興味を持たないように顔さえ見ないなんてね。

その帝が鷹男だったなんて出会いというのは不思議なものだわ。

もし鷹男が帝でなければ、あたしはそのまま鷹男の胸に飛び込んだと思う。

今、あたしは本物の女御様になれない。

その覚悟ができてないの。

ごめんなさい、鷹男。

弱いあたしを赦してほしい。

あたしはこの時、

誰に心が傾いていたのか気が付かないふりをしていたのかもしれない。

未来を想像し新しい女御様には勝てない自信のなさに自分を弱くしてたんだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

あたしはそれから吉野の君を藤壺に呼び出した。

吉野の君はあたしの返事を静かに聞いてくれた。

「瑠璃姫、答えは出ましたか?」

「うん、決めたわ。あたし吉野の君と一緒に暮らす。」

「瑠璃姫!」

吉野の君はあたしを抱きしめてこう囁いたの。

「私の愛するあの小さかった幼き姫を手に入れることができます。

懐かしの吉野の里での思い出、二人で静かに暮らしましょう。

あなたがいるだけで私は嬉しいのです。」

こんなに喜んでくれる吉野の君の顔をみるだけで嬉しかった。

嬉しいはずなのにあたしの気持ちは晴れなかった。

晴れないことにあえて気が付かずに・・・

 

それから吉野の君はこの後すぐに鷹男に報告したいと言ってきた。

けれど、鷹男はこの時代の最高権力者。

すぐにこちらの都合で対面できるお方ではない。

だからあたしたちは鷹男が来るまで待つことになったの。

 

 

 

 

 

 

 

「瑠璃姫もう決心はできたのですね。」

「はい」

「唯恵、いえ私の弟宮と一緒に現れてきたのが答えなのですね。」

「はい」

「そうですか。唯恵、いや吉野の君、私の愛する瑠璃姫を任せましたよ。

二人ともお幸せに。」

どくん

あたしはなぜか胸が苦しかった。

だってあっさり鷹男はあたしたちのことを認めてくれたんだもの。

どうして何も言ってくれないの?

やっぱりあたしに言ってくれた言葉は嘘だったのね。

あたしはどんどん気持ちが落ち込むことしかできなかった。

「・・・・」

「・・・・」

「兄宮!一つお聞きしたいことがあります。瑠璃姫を簡単にお放しになるのは

それだけ瑠璃姫への気持ちが軽かったのですか?

それとも兄宮としての立場がそうさせるのですか?」

「何を馬鹿な!私は本気で瑠璃姫を愛している!

お前にわかるわけがないだろうが!帝として何度自分の心を殺してきたか。

私にだって感情はある!

だがそれは許されぬことなのだ!私は帝なのだから!

一番欲しくてもどれだけ欲しくても、心がどれだけ悲鳴を上げようとも帝であるべき。

私はそう院に教わった。だからこそ私は・・・」

鷹男の本心を聞いた気がする。

いつも飄々として感情が読み取れないのに本気であたしのことを思ってくれている。

体を震わせ涙は流していないけれど消沈の姿に縋り付きたくなってしまう。

でもそれはできない。

あたしは吉野の君を選んだのだから・・・

「瑠璃姫、いいのですか?」

「吉野の君・・・あたし!」

その言葉を聞いてあたしは何も考えずに鷹男を抱きしめた。

子供のように頼りがないような寂しい姿。

見てられないわ!

あたしは鷹男にずっと傍にいる意思表示として手を握りしめ

しばらく抱きしめあっていた。

 

しばらく経つと吉野の君の声が聞こえる。

「瑠璃姫、兄宮と幸せに!」

 

あたしは吉野の君を見つめた。

さっきまで鷹男を抱きしめてつい気持ちが高ぶってしまったけど

「吉野の君・・・」

「いいのですよ、

私と一緒に暮らすとお決めくださったときは嬉しくて仕方がなかった。

それに兄宮のお気持ちも知ることができた。

それだけで、今までのことが報われるかのようです。」

「唯恵、すまぬ。」

「こちらこそ、瑠璃姫を一生幸せにしてあげてください。

もし泣かしたら、今度こそ奪いますから!」

そういって吉野の君はこの場から立ち去って行った。

「ありがとう、吉野の君」

あたしは申し訳ない気持ちはあるものの吉野の君からの言葉をそのまま受け取った。

 

 

 

 

 

 

 

あたしたちは二人きりになった。

さっきまで抱き合っていたけれど、吉野の君を選んだことはきまづく思う。

鷹男は何も言ってくれないしどうしよう。

しばらく黙っていたら鷹男から話してくれた。

「瑠璃姫よかったのですか?私なんかを選んでくれて・・・

唯恵のほうが大人でしたね。私なんてつい子供のようにあなたを求めてしまった。」

「うふふっ、確かに吉野の君はとても素敵であたしの初恋の君だもの。

仕方がないわよ。

でも、鷹男はあたしを本気で必要としてくれたんだものね。

鷹男は帝だからあたし一人だけを愛することなんてできない。

でもあたしだけを愛してくれるって言った言葉は信じようと思う。

それにあたしは鷹男の役に立ちたい。

でも鷹男があたしを裏切った場合は分かっているんでしょうね。

すぐに後宮から離れて吉野の君のもとに行くからね!」

「はい、もちろん吉野の君のもとにはいかせません。

一生私の愛はあなたのものです。

絶対にあなたを手離しませんよ。覚悟してくださいね!

そして、瑠璃姫あなたには謝らなければなりませんね。

私の身の上話を瑠璃姫に直接お話しすることをしなかったことを深く謝罪します」

「もういいのよ。」

「しかし、お怒りではないのですか?」

「怒ってたにきまってるじゃないの。でも鷹男はちゃんと謝ってくれた。

それにあたしへの気持ちもきちんと言ってくれたんだもの。

だから鷹男を赦すわ。

あたしは鷹男がどうなっても愛することを誓う。

だから鷹男、約束通りあたしだけを愛してね!」

「もちろんです。

帝の立場であるので世間的には他の女御を召さなくてはまいりませんが

私の心だけはあなたのものです。

他の女御への気持ちはただの親情、瑠璃姫には唯一の愛情を与えます。

瑠璃姫私に瑠璃姫の心をください。私だけを求めてください。

愛しています。」

「鷹男あたしもあなただけを愛しているわ!」

あたしは鷹男に抱きしめられついに

鷹男のものに体もそして心も捧げることになったの。

 

 

 

 

吉野の君は幼いころの姫君を想う。

私の愛した小さな姫には自分の進む道を間違えてほしくなかった。

でも瑠璃姫が本当に幸せになれるのであれば

自分の傍にいなくても構わない。

私は瑠璃姫が吉野の桜のように可愛らしかった笑顔を思い出す。

「あなたのことを本気で好きでしたよ。私の小さな姫君」

「吉野の君!ありがとう!」

あなたはそう思うのでしょうね、さようなら瑠璃姫。

 

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