好きなのに~渦巻く嫉妬の嵐5
他の女御様がこの部屋を出て行きあたし達だけになったの。
それを確認した後更に弘徽殿の女御様は扇をパチンとならした。
その合図で弘徽殿の女御様つきの女房達とあたしつきの女房達が一斉に部屋を出て行く。
その姿を見た弘徽殿の女御様は小萩と弘徽殿の女御さまの筆頭女房だけ残るように
指示を出した。
そうしてこの部屋には4人以外誰もいなくなってしまったのよ。
先ほどまでは宴で賑わっていたのに今では4人しか残っていないせいか凄く静かに感じた。
あたしは弘徽殿の女御さまの反応がどうなのか分からなくて緊張をしていたのよ。
「ようやく私達だけになりましたね。では改めて麗景殿の女御、私が弘徽殿の女御であり
東宮の母です。あなたとは長い付き合いになると思います。これからもよろしく頼みますね。」
「もちろんですわ!あたしこそ本来なら自分から直接女御様にご挨拶に伺わないとならないのに
行ってなくて誠に申し訳ありません。」
「いいのですよ、あなたも慣れない後宮生活大変だったでしょうから。」
「そうなんです~後宮生活は凄く堅苦しくて~~あっ!?」
危く弘徽殿の女御様の前なのに普段の言葉使いを出しそうになったから言葉を止めた。
その姿を見た女御様はクスクスと笑い出したのよ。
クスクスクスクス
その笑い声が起こり始めた時またもや女御さま付きの女房が「弘徽殿の女御さま!」
声をかけて諌めたの。
その時その声でハッとなさった女御様はその女房にいい聞かせるように話しだしたの。
「ここは私達しか居ないのです。私も堅苦しいのは大嫌いです。別に砕けた話かたでも
いいでしょう~絵式部」
「しかしそれでは他のものに締めしが付きませんわ」
「あら、麗景殿の女御はそこはしっかり分かる方だとは思いますよ。ねえ~麗景殿」
え!?急に話を振られても言葉を返しずらいんですけど~~~
「うふふ、麗景殿今はここに居る4人しかいません。だから緊張せず言葉使いも
いつもの言葉でいいのですよ~」
「でも・・・・」
「あら~私も後宮に居るといつも肩が凝って仕方がないのですから~」
「え~女御様もですか?」
「そうなのです」
ニッコリ片目をつぶって答えてくれた女御様は気さくで凄く話しやすい方だった。
さっきまでの緊張はほぐれいろいろな話を女御様とお話し、楽しく過ごすことが出来たの。
それから大分経って話が終盤にさしかかるときだった。
急に先ほどまでの気さくな態度から険しい表情になられたの。
その態度を察したあたしも背をまっすぐに伸ばし真剣に答えた。
「最後に麗景殿の女御におき聞いたします。あなたは東宮を愛していますか?」
「もちろんですわ」
「でしたら、もし東宮が何か罪を起してもそれでも離れずにいてくれますか?」
何?罪って何なの?それって鷹男がこれから何かを起すの?それとも起した事があるの?
あたしは今の言葉の真意が掴めずに思わず女御様を見つめたの。
「東宮に直接聞いた訳ではありません。しかし私はあの子の母なのです。何かをしようとしているのは
分かります。それも何か突拍子もないことを起そうと思っていることを。
深くは知りません。それでもあなたは東宮に
付添いますか?一生離れずに居てくれますか?」
女御様の言葉をあたしは全く理解出来なかった。
あやふやな言葉。
多分女御様も分からないんだと思う。
ただ何かを鷹男がしようとしていることを察知したのだろう。
それがよからぬことだと。
それでもあたしは鷹男から離れない。
何があろうと。
もし鷹男が罪を犯したとしてもあたしは絶対に鷹男から離れない。
そう誓ったんだから。
あたしはニッコリと女御様に笑みを浮かべてこう答えた。
「もちろんです。東宮様から一生離れません!信じてますから!」
その答えに女御様も納得されあたしに協力してくれると言ってくれた。
この言葉の意味をあたしはこの時全然分かっていなかった。
これから起こりえる事柄が、あたしを試すかのような最大な出来事の前触れだとは
気がつきもしなかったの・・・・