妄想の館

なんて素敵にジャパネスク二次小説(鷹男×瑠璃姫)

人魚姫の涙~プロローグ~


写真素材 cg.foto

幼き若君と母宮が久しぶりに二人きりの逢瀬を楽しんでいた。

そう遠くない未来に我が子は重い重責を背負うことになる。

そうなる前までは少しでも愛情を注ごうと母宮は思っていた。

そんな時だった。若君の何気ない一言に母宮は悲しみに包まれる。

誰からか聞いたのであろうか?

不安げな顔で母宮に問う我が子。

「母上、私は愛する人と将来結ばれることはできないのでしょうか?」

大人びてしまった我が子であったがまだ母宮にとっては大事な大事な息子であった。

寂しそうな表情に嘘でもいいから愛する人と結ばれると言ってあげたい。

しかし我が子はいづれは帝になるであろう身の上。

帝になって欲しいと母は思っている。

だからこそ結婚は政略結婚しかありえないのである。

我が子を不憫に思う。

愛する人とけして結ばれないのだろうから・・・・・・

しかしあえて母宮はこう答えた。

「そうです。しかしあなたがその姫君を愛してしまえば

あなたが愛する人と一生結ばれることができるのです。

それはあなたしだいなのですよ。」

あなたには沢山の貴族の姫君が女御として傍にいるでしょう。

だったらその中の誰かを愛すればいいのです。

あなたの元に来る姫君達にもお互い想いあえば我が子が言う

愛する人ときっと結ばれることができるでしょう。

しかしそんな運命のような出会いが出来るのか?

母宮は不安を隠せないでいた。

東宮の身では運命という出会いは不可能に近いのだから・・・・・・・・・








母上の言葉を胸に従え、少しずつ成長を遂げる若君。

そうして若君は突拍子のないある行動に出る。

そこで運命の出会いを遂げてしまうのだ。

しかしその出会いが幸福か不幸か・・・・・・・・

二人にしか分からないものなのである。









                   Memaid tears




















若君は少しずつ成長を遂げていく。

本来体は弱く母上には苦労をさせている。

だからこそ母の期待を背負い東宮として自覚を持つよう努力をしているのだ。

少し前の母上とのやりとりを思い描く。

「母上、私は愛する人と将来結ばれることはできないのでしょうか?」

何気ない女官の一人の言葉に不安を覚え思わず母上に聞いてしまった。

その時の母上の悲しい表情を忘れられない。

東宮として恥じないように教育を受けていたけど

自分の傍につく将来の相手が気になって仕方がなかった。

自分で好きな相手を選ぶ事もできないもどかしさ。

人は平等に分け隔てなく愛情を注がなくてはいけない。

そう教育をされればされるほど

私は自分の心を休ませる相手はできないのではないかと。

自分の心を預ける相手は一生見つける事はできないのではないかと不安で不安で

思わず母上に聞いてしまった。

だがその結果、母上を悲しませるだけだった。

肯定しか出来ない母を困らせてしまった。

しかし母の答えは肯定だけではなく限りなく肯定ではあったが他の道も示してくれた。

その想いを胸に私はある行動に移したのだ。

今なら動ける。

チャンスは一度きりだろう。

私は脅える家臣に協力をさせ東宮御所を飛び出したのだ。

私の相手になるであろう姫に一目でも会いたくて右大臣邸に向かった。


























「瑠璃さま~~~~およしになったほうがよろしいのでは~~~~」

「小萩、別にいいじゃない。高彬が病気であたしと遊べないのよ。だからお見舞いにいくくらい」

「でも内大臣家の姫君ともあろうお方がお忍びで幼馴染の君のお邸に行くだなんて」

「小萩は本当に心配性なんだから~ただあたしがおばあさまに教えて貰った元気の出る

お薬を届けに行くだけよ。なのに小萩までついてきてさ」

「そんなの当たり前です。瑠璃さまの身に何かがあったら・・・」

「もう!心配性なんだから~高彬のお邸は右大臣邸だわ。

警備もしっかりしてるし心配事なんておきないわ。」

「もちろん右大臣邸は不安ではありません。

そこにたどり着くまでと、瑠璃さまが何かを起さないかと

それだけが心配で~~~~」

「大丈夫大丈夫!薬を高彬に渡したらすぐに戻るからさ。」

「本当でございますね」

「うん」

そう、あたしは薬を渡したらすぐに自分の邸に戻るつもりだった。

でも運が悪いことに眠りについているだなんて運命のいたずらだったのかも知れない。










あたしはこのまま自分の邸に戻るのを躊躇った。

高彬に直接出会うことが出来ずなんだか右大臣邸にまできたのに

何もせず帰るのがイヤだった。

小萩を上手く出し抜きあたしはしばらく右大臣邸の邸を探索していた。

時々高彬の部屋で遊んだり庭先に出ることは

あったけどこんな奥まで来る事はなかった。

確かこちらの方は高彬の姉君達が住まう東の対。

庭を眺めていたら間違えてこんなところにまで忍びこんでしまった。

もうそろそろここから出ようかな~

そう思いあたしは元きた道を辿ろうと回れ右をしたその時

ちらっと何かがあたしの視線に入ったの。

庭の真ん中に池があった。

そこに一人の童子が池の中に視線を送っていたの。

あたしより4,5歳上の男の子。

姿はとても美しくあたしはしばらく動けずただ彼を見ているしか出来なかった。

とくん。

このときあたしは何を思ったのだろう。

男の子の視線の先を見て見ると池の中に何かが落ちていた。

多分何かを落としてしまったのだろう。

寂しそうで不安げな男の子。

ずっと見ていたのにその子はついに諦めの形を取った。

その表情をみたあたしは思わず何も考えず池の中に入り

その落ちた物を拾いに行ってしまった。

ばしゃばしゃばしゃばしゃばしゃ

握り締めたものはお守り袋だった。

それを大事に握り締め、あたしは男の子の方に向かっていったの。

「はい、これでしょ?」

あたしは笑顔いっぱいでそれを渡した。

男の子は急に現れたあたしの存在に驚き、表情を隠しきれない様子だった。

「なんで?」

「これあなたのだいじなものなんじゃないの?」

「それはそうだけど何故君が拾ってくれるの?池の中だよ!こんなに濡れて!」

男の子は我をすぐに戻し自分の衣を脱ぎ捨てあたしにかぶせてくれた。

「寒くない?」

「うん大丈夫」

しばらく男の子はあたしに甲斐甲斐しく世話をしてくれる。

そんな男の子のために何かができた事があたしにとっては嬉しいことだった。

今の季節はまだ暑い夏。着ているものはしばらくすると乾いてしまうだろう。

なのに男の子は申し訳ない表情で一生懸命にあたしの体を拭いてくれた。

あたしはやっとこのお守り袋を男の子に渡した。

「はいこれ」

「ありがとう」

男の子はそのお守り袋を大切そうに懐にしまった。

そして男の子はおしえてくれたの。

「これは私の母上が一生懸命に作ってくれたお守り袋。

中には私が産まれたときの臍の緒が入っているんだ。

肌身離さずもつようにしている。それを拾ってくれてありがとう」

男の子の嬉しそうな表情にあたしはとても嬉しかった。

「そうだ、私は東宮宗平。君の名前は?」

「あなたが東宮様なの?」

「そうだよ。君は一体誰?着ているものはとても高価なものだね。

ここの姫君なのかな?」

「えっとね~あたしは」

そのとき小萩のあたしを呼ぶ声が聞こえてきたの

「・・姫さま・・・・・・・・・る・・・・・・・姫さま・・・・・・・」

ヤバイ、こんなところを見られたら何を言われるかわからない。

あたしは東宮様と離れるのは寂しかったけど

見つかったらダメだと瞬間に思ってしまったの。

東宮様~さよなら」

あたしは別れの挨拶をよこす。

その時東宮様は言った。

「君を絶対に迎えに行くよ。君が誰なのか探して絶対に君を迎えに。

だからそれまで待っていて」

「うん!分かった。絶対にあたしを探して見つけてね」

幼き頃に出会った運命の逢瀬。

あたしはずっと待っていたの

いつか東宮様があたしを見つけてくれる。

そしてあたしが東宮様の横にいて二人で幸せになれる。

そんな他愛無いことを思っていた。

そうあのころが一番幸せだったのかも知れない。

まさか今こんなに苦しいだなんて夢にも思わなかった・・・・・・・・

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