妄想の館

なんて素敵にジャパネスク二次小説(鷹男×瑠璃姫)

止められない初恋6


写真素材 pro.foto

あれから吉野の君はあたしを避けることがなく

鷹男を交えて三人で楽しく談話できるようになっていた。

そんなあたし達の平穏な生活が一変することになる。

 

 

「女御様、最近食が細くなっておりませんか?」

「そうかしら?小萩そう思う?」

「ええ、ご飯を食べるのが生きがいだとでもいうように

毎日米を三杯は平らげてらっしゃったのに一杯だけしか食べられないし

おかずも残されてしまいます。体調でもお悪いのですか?

それでしたら薬師に診ていただかなくては」

「小萩、大丈夫よ!あたしは元気だから。」

「そうおっしゃられるのならよいのですけど、もし何かあったら

すぐにおっしゃってくださいね。」

小萩は心配性ね。あたしの体はいつもと同じよ。

ただ食欲がいつもよりも湧かないだけだし太りすぎても

嫌じゃない。

そう思っていたのだけれどある日のこと。

食事をしていた時急に吐き気がこみ上げてきたの。

「女御様!大丈夫ですか?」

「大丈夫よ。ちょっと気持ちが悪いだけで」

「女御様、もしかしたら!薬師をお呼びなさい!」

小萩が慌てて薬師を呼ぼうとするの。

少し気持ちが悪いのとめまいがしただけなのに大げさね。

そう思っていたらあっという間に寝床に寝かせられ

あたしは薬師に診てもらうことになったの。

そうして薬師が驚く発言をしたわ。

「お喜び申し上げます。女御様は身ごもっておられます。」

「ええ!」

「瑠璃様~~~~~~よかったです。小萩はこれ程嬉しいことは

ございません。今すぐ東宮様にご連絡してきます。」

小萩は大慌てで梨壺から出て行く。

あたしはお腹をそっと撫でる。

このお腹の中におややが存在するの?

あたしと鷹男の子供が!

凄く嬉しい!あたしはこの子を絶対に幸せにしてみせる。

そんな決意を抱いていた時、急に御簾から飛び出してきた鷹男に

ギュッと抱きしめられていたの。

「瑠璃姫!本当にお腹の中にややこがいるのですか?」

鷹男は恐る恐るあたしのお腹をさすってきたの。

あたしはその手の上にそっと手を置いて

「鷹男、あたしと鷹男とのややこがここにいるわ。絶対に幸せにしようね!」

「もちろんですよ、瑠璃姫!」

あたし達は大喜びでまだ生まれてもいないややこの話で大盛り上がりだった。

まさか鷹男と一緒に吉野の君が付いてきていたことにも気が付かず

その姿をどんな想いで見つめていたのかも知らずにいたの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の目の前で兄上と初恋の君が大喜びをしながら抱きしめあっている姿を見て

私は心にどす黒い闇を感じた。

もしかしたら、あそこにいたのは兄上ではなく私だったかもしれないのに・・・

私は東宮の地位なんていらない、初恋である瑠璃姫さえいれば

それでよかったのに、東宮の地位も瑠璃姫も兄上の物になった。

二人の喜ぶ姿が辛く私は逃げるように梨壺から出て行ったのだ。

あれから、瑠璃姫が身ごもったことで後宮はさらに華やぎ

幸せいっぱいの雰囲気になっていた。

少し前までは兄上と私は東宮争いの真っただ中、殺伐としていたが

兄上が瑠璃姫を娶ることで後ろ盾を得て東宮に決まってからは

私の前から人は沢山去っていった。

権力争いに負けた人間には用がないとでもいうように

皆兄上に近づいていく。

その様を見ながらも元々東宮に興味がない私は特に何も思わなかったけれど

瑠璃姫が東宮妃となって後宮に参内してからは兄上が羨ましくて

仕方が無かった。

だからこそ彼女を避けていたというのに彼女の方から私を離さないと

言わんばかりに近づいてくる。

初恋の君だからこそ思い出が美化されているに違いないと思ったこともある。

兄上の妃になった瑠璃姫に懸想しているだなんて身の破滅だ。

もし私が懸想していると周囲にばれたら瑠璃姫にまで被害に陥れる可能性もある。

そう思えば彼女から離れるのも苦にならなくなったのに結局のところ

絆されて、前の様に三人で談話できるようになった。

彼女を手に入れれなくても側にいられるだけでいいと思えるようになった

矢先に瑠璃姫の懐妊。

私は義理の弟として瑠璃姫と兄上に喜びの言葉を交わさないとならない。

そんなこと・・・私ができるのか?

できるわけがない!

ずっと瑠璃姫・・・・あなただけを想っていたのに

あなたは兄上の妻に納まった。

この苦しみをどこで発散すればよいのだろう・・・・

苦しくて辛い。

私は幸せそうな兄上と瑠璃姫からまた避けるようになっていったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

最近また吉野の君があたしを避けるようになっていたことに気が付いていた。

どうして・・・・

どうしてあたしを避けるの?

いえ、分かっていたこと。

だってあたしは鷹男の妻だもの。

鷹男以外の殿方を想ってはダメ。

そんなことは重々分かっているのよ。

なのに会えなくなれば子供の頃の寂しさを思い出す。

幼馴染のあたしの初恋の君。

二人とも大好きだった。

なのに迎えに行くという言葉だけを残して何も連絡もくれずに

どれだけあたしは寂しかったか。

何度泣いたか分からない。

鷹男も吉野の君も勝手よ。

二人はあたしが内大臣家の姫だということを知っていた。

だけどあたしは二人がどんな立場でどうして吉野にいたのかさえ知らない。

本名でさえ教えてくれなかった酷い幼馴染。

初恋という想いだけをあたしに植え付けて消えていなくなってしまった。

だからこそそのトラウマは、あたしの中でいまだに消えないでいたの。

またあたしの前からいなくなるの?

消えるの?吉野の君!

あたしは我儘なんだろう。

鷹男だけじゃなく吉野の君も欲しい。

両方ともあたしの傍から離れてほしくないの!

もし二人にあたしのこの強欲な想いを見せたら二人ともあたしから

去っていくかもしれない。

それでもいい!

そう思えるほどあたしの中で子供の頃に置き去りになった想いは

消えずにいたのよ。

 

 

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