星に願いを前編
どれだけ姫を想っても姫は私に答えてくれなかった。
どれほど私が瑠璃姫に恋焦がれているのかあなたは分からないのでしょうね。
私はあなただけを生涯愛し続けることを誓います。
もう、あなたは手の届かないところにいってしまったが
それでも私はあなただけを愛していたのですよ。
瑠璃姫・・・・・・・あなただけを・・・・・・・・・・
星に願いを☆彡
あたしはついに高彬と結婚することが決まった。
今日は高彬と初夜を迎える日。
やっとあたしは高彬の妻になるの。
でも本当に高彬を愛しているわけではないの。
あたしが本当に愛しているのは東宮である鷹男なの。
でも、あたしは鷹男を選ばず高彬と結婚をすることに決めた。
それは鷹男の気持ちが自分から離れてしまうことが怖かったから。
男性は生涯一人の女性だけを愛することは殆どいないとそう言われていた。
子孫繁栄のために数々の女性の間を渡り歩いていく。
あたしはそんな一時の愛情だけを頼りに鷹男を待つだけなんて絶対に嫌。
そんなことあたしには我慢できない。
鷹男がどれだけあたしに愛を囁いても未来を思い浮かべると怖くて仕方がない。
だから鷹男の気持ちから逃げた。
鷹男があたしを好きなのは単に物珍しいから。
今はそう思っていてもあたしへの気持ちは消える。
離れた距離にいればあたしにガッカリすることもない。
心が離れることはない。
そんないくじのないあたしは鷹男から逃げたの。
そうして、あたしだけを一生愛してくれる。
あたし意外妻を娶らない。
そう言ってくれた高彬と結婚をすることにしたの。
だけど・・・・・だけど本当にこれでよかった?
あたしは一番愛している人を諦め二番目に好きな人を選ぶ。
それでもいいの?
自分の気持ちが不安になってくる。
「瑠璃さま・・・・・」
小萩が心配そうにあたしを見つめる。
小萩にはあたしと鷹男との出会いを話していた。
でもあたしの気持ちは小萩には話していなかった。
もし自分の気持ちを他の人に話してしまったらその気持ちを抑えきれることが出来るか
全然分からなかったから。
もしかしたら馬鹿なことをしてしまうかもしれない。
だから小萩には何も心配ないと伝えるしかできないのよ。
「小萩・・・ありがとう。今日が初夜だから緊張をしてしまっているのよ。
何度も初夜は流れてしまったでしょう。だから今日こそは成功したい。
そう思ってしまっただけなの。小萩が心配することは何もないから。」
「・・・・・・・・・・・・・・瑠璃さま。本当にそれでよろしいのですか?」
「何言ってるの?」
「瑠璃さまの心には高彬様ではなく他のお方が」
「小萩!?」
あたしは思わず大声を上げた。
それ以上のことは聞きたくない。
そんなことを聞いたら決心が鈍ってしまうから。
「あたしは高彬と結婚する。そう決めたの!」
あたしは自分に言い聞かせるように発した。
そう・・・・・あたしは高彬を選んだのだから・・・・・・・・・・・
それからあたしは考え事をするからと小萩に頼んだ。
あたしは高彬が来るのをただ待っていた。
早く高彬に出会いこの不安な気持ちを取り除いてほしかったから。
そうして夜の帳が落ちる。
あたしは部屋から出て夜空を眺める。
その中でも天の川といわれる沢山の星ぼしが見える。
ああ~今日は七夕だった。
愛する者達が唯一出会える日。
一年で一度だけ愛する人と出会い一夜を過ごす。
あたしは願う。
一夜だけでいい・・・・・・あたしの愛する人と共に過ごしたい。
一夜だけでいいのよ・・・・・・・一夜でいいから鷹男と夜を共に過ごしたい。
いつの間にやらあたしは必死で夜の星に願いを込めていたのよ。
その時、星が一つ流れた。
あたしは必死に願いをこめていた時、急に目の前が真っ黒になっていた。
自分が今どんな状態なのかも分からずにあたしはそのまま気を失った。
瑠・様・・・・・・・・・瑠・様・・・・・・・・・・・・・・・
瑠・様・・・・・・
誰かがあたしを呼ぶ声がする。
あたしは何で今目が醒めていないのだろう?
あたしはさっきまで高彬を待つために三条邸にいたはず。
あっ!?
起きなくては!
そう思いあたしは慌てて目を開ける。
多分小萩があたしを呼んでいたんだわ。
急に寝てしまったからあたしを起しにきてくれたのよ。
あたしを呼ぶ声は小萩のはず。
そう思ったのだけれど目を醒まして目の前にいたのは小萩???????????
でも?????
「瑠華姫様!このような場所でうたた寝をしてもらっては困ります。瑠華姫様!ここはご実家の
二条邸ではございませんよ。瑠華姫様はもうただの姫様ではございません。
あなた様は梨壺の女御様なのですよ!なのにこのような端近にいたら周りに何て言われるか
分からないではありませんか!」
は!?
瑠華姫?梨壺の女御?一体誰のこと?
あたしは思わずキョロキョロ他に人がいないか確かめてしまった。
でもあたしとこの目の前にいる女性の他にみつからなかた。
「瑠華姫様!あなたは女御様なのですからご自覚を持っていただかなければ!」
少し小萩に似た女性があたしに向かって怒鳴り声を上げる。
でもあたしにはサッパリ理解できない。
瑠華姫????それって・・・・・
「ねえ~瑠華姫ってあたしのこと?」
「まあ~!?」
目の前にいた女性はあたしの言葉に一瞬驚いたけどすぐにいつもの調子に戻ったようだった。
「瑠華姫様?何をご冗談を言って見えるのです?あなたは内の大臣様である高彬様と
太政大臣様の総領姫でもあられた瑠璃姫様のご息女様ではありませんか!
それにあなたさまは東宮様の女御で梨壺の女御様なのですよ!もう瑠華姫様は入内なさったのですから
いい加減大人しくしていただかないと困ります。」
あたしはあまりのとんでもない状況にパニックになっていた。
なんであたしは後宮に居るの?それになんであたしが瑠華姫っていう違う姫になっているのよ!
あたしは衝撃のあまり声も出せなかった。
もしかしてあたしは未来に来ている?そういうことなの?
だったら目の前にいる女性はもしかして・・・・・
「あんたはもしかして小萩?」
未来に来てしまっているなら小萩じゃない。そう思うのだけどそれしか名前が出てこなかったんだもの。
あたしの言葉に目の前の女性はかなりむっとしていた。
「瑠華姫様!その名前は私の母上の名前でございます!何故私の名前と母上の名前を間違えてしまうので
す!私の名前は萩乃。瑠華姫様の付の女房ではありませんか!まさかこの私を忘れてしまったので
ございますか?」
うわ~。小萩の娘なの?顔も少し似ているけど性格もそっくりじゃないの。
親子代々小萩もあたし達に振り回されたのね。あはは・・・
何だか未来に行ってもあたしもこの娘も問題児みたいね。
でも、本当にあたしは高彬と結婚したんだ。
ふとそう思った。もちろんあたしは初夜を高彬と過ごすために待っていたんだから
あのまま高彬と結ばれたはず。
そのはずよ。でもどうしてだろう・・・・・
あたしに娘が出来てしまってもそれでもモヤモヤする。
もう決まってしまっているはずなのにそう・・・・がっかりしているあたしがいた。
あの時点で高彬と結ばれることは必然だったのにね。
馬鹿ね・・・・何故今あたしは後悔をしてしまっているんだろう。
その内、あたしは知りたくなっていた。
未来のあたしは幸せだったのか?満足した人生だったのか?
過去のあたしが知らない未来のことを聞くのは卑怯なことなのかもしれない。
でも知りたかった。
知りたかったのよ!
「ねえ~萩乃・・・・・・・・教えて頂戴」
「何をでございますか?」
「あたし、いえあたしの母様って幸せだった?」
あたしのこの言葉に先ほどまで笑みを浮かべていた萩乃の表情が曇った。
「北の方様は内の大臣とお幸せでしたよ。今では珍しく内の大臣様は北の方様意外は
奥様は娶られませんでしたしお子様を二人ももうけられましたが家族4人とても幸せそうでございまし
た。そう私は思っておりますわ。しかし・・・・・・」
「しかし?何なの?」
「私は北の方様とそんなに長いこと一緒にいたわけではございません」
「え!?」
「北の方様は瑠華姫様が6歳の頃には他界されたではありませんか?」
え?あたしはそんなに長いこと生きていたわけじゃないんだ。
でもその後の言葉のほうがあたしにとって衝撃的だった。
それは・・・・・・
「本当ならこのことを私が話すべきではないのかもしれません。しかしずっと母が
苦しみ、そして私に話してくれたことがございます。
本当なら北の方様には内の大臣以外の方を愛されていたのです。しかし、北の方様は
ずっと悩み続けそして内の大臣を選ばれました。それからは順風満帆でお二人とも幸せに
暮らされたそうです。ですから母も北の方様は吹っ切られ、内の大臣だけを愛し続けているのだと
そう思われていたそうです。しかし、北の方様はずっとその方を忘れてなかったそうなのです。
北の方様ご本人から聞いたわけではありません。しかし瑠華姫様がお生まれになってからは
ずっと瑠華姫様があかごの頃から「あんたは本当に愛する人と結ばれなさい。」
人前では口に出さないのに誰もいないとそう呟かれていたそうです。
たまたま母が偶然聞いてしまった。その時やっと北の方様がまだそのお方を愛しているのだと
気がついたそうです。母上はそのためにも瑠華姫様には本当に愛する人と結ばれるように
お怒りを覚悟で内の大臣に進言なさったそうです。しかし内の大臣も断ることが出来ず
ついに瑠華姫様は東宮様の女御として入内なさったのです。
それを未だに嫌がっているのは分かってます。しかし」
「萩乃!?御免なさい。しばらく一人にしておいてくれない?」
「姫様?」
「お願いよ!」
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