妄想の館

なんて素敵にジャパネスク二次小説(鷹男×瑠璃姫)

藤壺女御物語10

大皇の宮様はあれから何もおっしゃられない、

ただ何か考え事をなさっているようだった。

「大皇の宮様、院御所が山科にあることは伺っておりましたけど

山科は墓所が多いところ。

院は変わった場所にお住まいなのですね。」

「それも院の思し召しなのですよ。院は・・・瑠璃姫よくお聞きになってね。

あなたに朝霧のことを教えた殿方・・・

その方は院の御子。私のお産み申し上げたお主上の弟宮となるお方なのですわ。」

ああ、やっぱり、吉野の君は佐子姫の、大皇の宮様の妹姫の子供だったんだ。

あれから大皇の宮様から昔の話を伺った。

そして八年前に、今上帝が病に伏した折に、先の左大臣と右大臣が

あわやのつかみ合いに発展しそうになるほどの、東宮問題があったこと。

その時に先の左大臣が、自分のお預かりしている血筋正しい親王こそ

東宮にふさわしいと発言されていた。

様々な話の中で吉野の君の存在が親王として認めることが

決してできないことを知る。

あたしはそのことを知っても、やっぱり納得ができないくらい

胸が締め付けられるほど苦しかった。

吉野の君の気持はどうなるの?

吉野の君は東宮になろうとは思ってなかったはず、ただ好きな姫に

見合う位が欲しかっただけで。

そして父君にこんな子は知らぬといわれた。

先の左大臣だって、利用価値のなくなった吉野の君を捨ておいただろう。

本当に吉野の君は帰るところも何もかも失くしてしまったんだ。

 

 

 

あたしは院御所につき早速院と対面ができるようになったの。

「唯恵のことを知っているものとか・・・」

「はい」

「唯恵のことは知っています。もう何も聞くことはない。」

あたしはついかっとなって院に向かって大声で怒鳴ってしまった。

「知ってるって、院は何をご存じだというのです。

吉野の君はただ父君にお会いしたくて・・・

ただそれだけのために吉野での幸せな日々まで捨ててまで

父君にお会いになったんです。」

「知っています。あれと会った時、まっすぐな野心など

微塵もない目で私を見ていた。だからこそ私は決めたのです。

決してこの子を我が子と認めまいと」

「どうして!」

「あれは純粋すぎたのです。陰謀の交錯する政治世界。

この複雑な宮廷社会では生きられない。」

「だからおっしゃったのですか?」

「そう、我が子は宗平親王のみと。」

「だから吉野の君は絶望して出家してしまったのよ。

父君にこんな子は知らぬと・・・」

「違うのですよ。瑠璃姫。出家をおさせになったのは院の思し召しなのです。」

「させられたって!じゃあ無理やり!」

「吉野の君のためなのですよ。時々参内させて遠くからなりとも

お心にかけようと・・・

それが院にお出来になるせめてもの事だったのですわ。」

どこが吉野の君になるというの?

全然吉野の君のことを考えてないじゃないの。

何もわからないうちに吉野の君は出家させられてしまったんだ。

やがて参内した吉野の君の目にした東宮はどう目に映ったのだろう。

同じ父君の子でありながらすべてに恵まれ守られていた東宮宗平親王

忘却は罪です。

吉野の君!

 

「光徳院は間違っておられました!」

 

「そう私は間違っていたのです。あの夜、正良親王を落飾せよと命じた夜

正良親王を脱出させる直前に唯恵は私の枕元に来て囁きました。」

「え!正良親王の落飾を手伝ったのは吉野の君だったの?」

「そうです、そのことを宗平親王から命じてもらった。」

「ええっ。そんなの・・・そんなのひどいじゃない!」

「はい、唯恵は

 

あなたの御子は宗平親王ただおひとりなのですね。宗平親王を守るために

また一人、その手でお子を捨てられるのですね。

 

自分からはけして私の近くに寄らない唯恵が初めて私に語り掛けた言葉。

その言葉を聞いて私は知ったのです。唯恵がどんなに私を見て悲しんだか、

私は間違っていたのです。」

 

吉野の君はいつまでも子供心のままに父君を慕い続けて・・・

だから今上帝を恨んだのよ。

父帝からただおひとりのお子として認められ、東宮の地位にあり

小さな弟宮さえも容赦なく切り捨てられる。

正良親王の落飾命令が東宮宗平親王の口から発しだされ正良親王の運命に

自分を重ねた吉野の君の心は、どれだけ冷酷に響いただろう。

「吉野の君は帝の命を狙っています!」

「馬鹿な!ごほっ!」

「ではあの呪詛は先の左大臣の残党ではなく吉野の君の・・・」

「吉野の君を止められるのは光徳院ただお一人です!先の左大臣もいない今

吉野の君を我が子と認め下さるのに不都合はないはずです。

吉野の君はただそれだけを思って・・・」

「唯恵をここに!」

 

 

 

 

これで・・・運命が変わり始める・・・・

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