妄想の館

なんて素敵にジャパネスク二次小説(鷹男×瑠璃姫)

藤壺女御物語8

あれからあたしは、吉野の君、唯恵が気になって仕方がなかった。

それに、呪詛状の件も気になる。

これ以上唯恵が何も起こさなくてはいいのだけど。

あの時気になることがあった。

それは父君のことを尋ねた時のこと。

唯恵の顔、・・・あれは憎しみに染まっていた。

今あたしにできることといえば、もうすぐ参内なさる大皇の宮様に

話しを聞くこと。

ただそれだけしか今はできなかった。

 

 

ある日の亥一刻

「瑠璃姫、ふふっ怖い顔をなさって何を考えて見えたのですか?

私のことを考えてくれたのなら嬉しいのですがね。」

パチッ!ウィンク!

「もう吃驚させないでよ、鷹男。」

床下で出会って以来何度か鷹男と語り合うことが多くなっていた。

以前は今上帝が、そうそろそろ後宮に慣れたことだからと

あたしの体に触れるようなことを言って見えたのに

呪詛の件があったからか、お主上藤壺に来なくなった。

あたしにとっては都合がいいことなんだけどね。

多分鷹男や権の中将様から協力していることをお聞きになったんだと思う。

そうでもなければ、こんなに鷹男が夜遅くとはいえ

誰にも咎められないわけがないもの。

主上の代わりに鷹男はなぜかいい時にこの藤壺にやってくる。

タイミングがいいのよね。

そして一番困るのがあたしにモーションをかけてくること。

あたしは仮にも女御なんだからモーションをかけても仕方がないことなのに

鷹男はいつも話をずらす。

でもね、鷹男みたいな殿方に、甘い言葉をささやかれたら

ふらっと来てしまうのが女心というものよ。

吉野の君と出会う前なら鷹男の事ばかり考えてしまったけど

吉野の君と再会してしまった。

だからあたしはこの二人のことでつい悩むことになってしまっているの。

さすがに鷹男の前では鷹男にドキドキしてしまう。

主上以外の殿方を心に秘めることは許されていないのにね。

でもいいの。あたしの心はあたしだけのものなんだから。

「瑠璃姫、どうかなさりましたか?」

「ううん、何でもないわ。あれから事件の進展はあったの?」

「残念ながら瑠璃姫、犯人の目星も全くついていないのです。

瑠璃姫が遭遇した怪しい男はあれから何も動いていなようで動きがない分

これであきらめたのか?それとも準備に時間がかかっているのか?

まだわかりません。」

よかった。唯恵はあたしの言ったことを実行に移しているのね。

このまま何もなければいいのだけれど・・・

「…瑠璃姫…瑠璃姫!」

「はっ、鷹男!」

「どうかなさりましたか?今日はいつもの瑠璃姫と違っていますね。

私との会話はつまらないのですか?」

「え!そんなことはないわ。ただ考え事をしていたの。」

「考え事とはまさか私以外の殿方でも考えてみえたのですか?」

「えええ!そそそんなことはないわ!どうしてそう思うの?」

「それは瑠璃姫がいつもと様子が違うからですよ。

少し艶っぽいです。誰か気になる殿方がおられるのですか?

私以外に?」

「違うわ!」

鷹男は鋭いことを言う。

あたしは慌ててしまうけどこのままでは吉野の君のことがばれてしまう。

それだけは回避しなくては。

あたしは冷静さを取り戻して鷹男と事件の対策の話し合いを始めた。

その時に聞きたくない会話が入る。

「瑠璃姫はご存じでしょうか?律師である唯恵というもののことを。」

なっ、唯恵をどうして鷹男が知ってるの。

「ああ、顔はいいけれど冷たそうな僧のこと?」

「さすがは瑠璃姫ですね。普通の女性ならあの僧の前では

年を忘れて騒がれていますよ。」

「まあそうでしょうね。あれだけの美形はそうそういないもの。」

「・・・」

「なによ!」

「いえ、瑠璃姫はほかの女性とは違うのですね。

あれほどの美形だから他の女房のように大騒ぎをなさるかと思っていました。」

そりゃあ鷹男に言えないわよね。どれだけ冷静を取り繕っているか

隠しているだけなんだけど。少し罪悪感がうずく。

「瑠璃姫大丈夫とは思いますが、自分の周辺に気を付けてください。」

まさか唯恵のことがばれたの?

「なんで?」

「実はその唯恵は女性に見向きもしないと評判の持ち主なのですが

多くの女性に言い寄られているのに誰の手も取らないのです。

だからこそ冴え氷る君だと揶揄されるようになったのですが。

しかし、そのものが最近仲睦まじくしているのを多数の人間が目撃しています。

それが藤壺に新しく入ったばかりの名をさつきという女房だったのです。

あの事件のあとからですよ。あの時床下にいたのは私と瑠璃姫、

そして犯人のみ」

「ちょっと待ってよ!どうしてあそこには犯人だけだと特定できるの?

あたしみたいに偶々入った人間もいるかもしれないじゃない。」

「それは瑠璃姫が教えてくれた猫のなき声ですよ。ひっかき傷を持つ男。

そいつが犯人なのは間違いありません。」

「だからどうしてよ!」

「それは秘密ですよ。」

ウィンク

あ、そのウィンクにあたしが弱いのわかってやってるでしょう。

ムカつく!

でもまだ吉野の君が犯人だと特定されたわけじゃないわ。

もうひっかき傷はなくなっているでしょうしね。

それよりも気になるのはさつきの事よ。

いつの間に吉野の君と仲良くなったの?

「・・・」

「瑠璃姫もしやお体の具合でも悪いのですか?もしそうならいけません。

すぐに床に入らないと。瑠璃姫のお加減が悪いことに気が付かなくて

申し訳ありません。私はすぐ退出いたします。」

「鷹男?」

「では失礼いたします。」

あたしは思わず鷹男の衣の裾を握りしめてしまった。

「る、瑠璃姫?」

「まだここにいて、具合は悪くないの。ただ考え事をしていただけ」

「それならおひとりでお考えになった方がよろしいのではありませんか?」

「そうね、その通りなんだけど鷹男がなんだか寂しそうだったから。」

「当たり前ですよ。恋焦がれる方にすげなくされてしまったのですからね。」

「もう、すぐ鷹男は冗談を言うのだから困るわ。」

「姫、冗談ではありませんよ。」

「・・・・・」

吉野の君の事、さつきのこと、あまりにもいっぱい情報が入ってきて混乱していた。

吉野の君にはさつきがいる。

知らなければよかった。

このときのあたしは動揺していていつものように頭の回転が悪い。

しばらく二人の間では沈黙が続く。 

「姫、申し訳ありません、今度こそ失礼します。」

「鷹男・・・いかないで・・・あたしはどうしたらいいの?」

思わず泣きそうな声が出てしまった。

吉野の君が・・・・

「瑠璃姫?」

鷹男はあたしを何も言わずに抱きしめてくれた。

あたしは嫌じゃなかった。

それよりも嬉しかったの。

あたしは思い切って話し始めた。

「あたしは幼いころ、吉野の里で過ごしたの。そこでは貴族としてではなく

里の娘のようにたくさん遊んだわ。

吉野の里は桜が満開でとても美しかった。

ふふっ、そこで美しい若君と出会ったの。あたしは彼を吉野の君と名付けて

二人で吉野を走り楽しく過ごした。

あたしたちままごとのような恋をしたの。」

「瑠璃姫の初恋の君ですか?」

「ええ、ある日吉野の君はあたしに

いつか迎えに来てもいいですか?

と言ってくれた。そして接吻のキスを欲しいと願ったの。

でもあたしは意味が分からないからつい手を差し出したの。

吉野の君はその手に菫の花をのせてくれただけだった。」

「瑠璃姫はその若君が筒井筒の仲なのですね。」

「鷹男?」

「それでどうなったのですか?」

「吉野の君は結局流行病でなくなったと母君がおっしゃられた?」

あれ?吉野の君の母君は吉野の君はなくなったといっていない。

死に顔を見たわけでもない。ただ流行病だったからその日のうちに

茶毘に付したというのを信じたから。

唯恵は吉野の君だと自分で言っていた。

でもあたしはすんなり納得できなかった。

だって、あたしは・・・

「瑠璃姫?」

「あっ、ごめん、鷹男。」

「いいのですよ。その吉野の君を思い出して見えたのでしょう。」

「どうして?」

「瑠璃姫の事なら私は何でもわかるのです。ふふっ、そう思いたいだけですがね。

瑠璃姫が筒井筒の君の話をされているとき、

それはそれは幸せそうに話されて見えたのでついそう思ったのです。」

「幸せって・・・そうあの頃が懐かしいのもあるわね。

だってあたしは女御様にならなければ吉野の君を一生思いながら

尼になって弔おうと思っていたのですもの。」

「なんですって!それはいけません。

瑠璃姫にはこの私がいるではありませんか?」

「ちょっと、やあね、鷹男。あたしはこれでも女御様なのよ。」

「はいそうですね。」

「何納得してるのよ。だから鷹男には関係ない話じゃない。」

「そんなつれないことをおっしゃるとはなんと悲しいことか。」

「鷹男・・・大丈夫よ。」

「私を好きでいてくれますか?」

「好き・・・」

鷹男がウインクをする姿が見えた。

「鷹男!」

「すみません、瑠璃姫。今日の瑠璃姫は少し悲しそうだったものですから。」

「だからと言って勝手に変なことを言わせないでよ。」

「変なことではありませんよ。私は瑠璃姫を愛しているのですから」

「もう!鷹男ったら!ふふっあはは」

本当に鷹男はあたしの心を軽くしてくれる人、

先ほどまでは吉野の君のことでいっぱいだったのに

今は鷹男のことでいっぱいだわ。

優しい鷹男、あなたはいったい何者なのか・・・

あたしは本当は予測できたのに

あえて正体を深く考えないようにしていたのは逃げだったのかもしれない。

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