嵐のような恋物語5
吉野の里でまた鷹男と過ごすことが出来るとは思いもよらなかったけど
それでもやっぱり楽しくて仕方がなかった。
幼き頃と違って体も大きくなり、
あの頃とは違ってさまざまな発見もすることが出来た。
でも後少しで鷹男は吉野の里からまた離れていく。
そんな寂しさが胸にささる。
そんな時に鷹男はとんでもない事をあたしに聞いてきたのよ。
「瑠璃、お前は何で誰とも結婚しないんだ?」
「なんで、鷹男はあたしがまだ独身なの知っているのよ。」
「当たり前だろう。これでも身分は高いんだ。
瑠璃はこれでも大納言家の姫君だからな~
未だに独身だというのは噂で聞いているよ。」
「噂ですって!どうせくだらない噂なんでしょう」
「ははは、まあそうだけどな。お前が独身を貫いているのわ、
やっぱり吉野が迎えに来てくれるのを待っているからなんだろう?」
「違うわよ!吉野の君が迎えにくるとそういっていたから
初めは待っていたけど連絡も全くないしだから、もうあたしは待ってないわ。
もう一生独身でいるんだから」
「おいおい、そう吉野を責めないでやってくれ。
あいつはあいつで大変だったんだから・・・」
「そうかもしれないけど、でもあたしはずっとほったらかしだったのよ。
それに未だに連絡もないし。
事情があったとしてもいつまで待てばいいのかなんて分からないじゃない。
だったらあたしはずっと独身でいいわよ。」
「それって結局吉野が迎えに来るまで待つのと一緒なんだよな」
「え?・・・何をいっているの。あたしは別に・・・」
「瑠璃は今でも吉野が好きなんだな」
「鷹男?」
「すまん瑠璃。変な事を言ってしまったな。」
「別にいいんだけど・・・・・そういえばそうだ。
鷹男あんただってもう既にどこかの貴族の姫君に通っているんじゃないの。
あんたみたいな口だけが達者な男だからいっぱい姫君達をくどいていそう」
「瑠璃、俺は簡単に姫君をくどく男じゃないさ・・・
でも、もう俺には一人だけ姫君がいる」
「え!」
あたしは急に胸が締め付けられたかのように感じた。
「じゃあ鷹男はもう結婚していたんだ~何よ、水臭いわね。
教えてくれれば良かったのに」
あたしは自分の心が動揺している事を鷹男に知られないようにするしか出来なかった。
「瑠璃、まだ結婚はしてないけど婚約者はいるんだ。
そして俺が求めなくても沢山の姫君が俺の元に来るだろう」
「それって、あんたの自意識過剰なんじゃないの。
鷹男は自分がかっこいいと思って沢山の姫君を
くどきまくっているんじゃないの?」
「違う!」
凄く大きな声で叫んだ鷹男に吃驚したの。
いつも上から目線な鷹男に苛立ちを感じていたのに
鷹男の真剣さが伝わってくるかのように感じられた。
「俺の結婚は俺自身が決めたものじゃない。
全て周りの思惑で決められるものなんだ。
だから今俺の婚約者の姫君は大事ではあるが彼女を愛しているわけじゃない。
俺の意思が全くない結婚だ。
でもやっぱり本気で愛した姫とどうしても結婚がしたいんだ。」
「鷹男、あんた誰か好きな人がいたの」
「ああ~」
その言葉を聞いてあたしは衝撃を受けた。
今まで幼馴染でいつもいじわるばかりをしていた鷹男に好きな人がいる。
そう聞いただけであたしの心はちくんと痛みを発してしまう。
何故こんなに胸が騒ぐのか分からない。だけど自分は鷹男に好きな人がいる、
その事実があたしを苦しめるの。
そうして苦しんでいるあたしに向かってもっと吃驚することを鷹男はあたしに告げた。
「瑠璃、俺にはたった一人だけ愛した姫君がいる。
だからその姫君だけしか俺は欲しくない。
でもその姫君は俺を好きじゃないんだ。」
「え!鷹男が好きな人は鷹男が好きじゃないの?」
「ああ~」
「そんな・・・だってあんたは確かにむかつく男だけど
意外に優しいところもあるわよ。
いつもいじわるで嫌な奴だけど良い所もあるし・・・
そんなあんたを嫌う姫なんているわけが」
「そんな姫君なんている訳がないか。だったらお前はどうなんだ?」
「え?あたし?別にあたしは鷹男のことなんて・・・嫌いじゃないけど。」
「だったら俺と結婚してくれるか?」
「は?」
「瑠璃、俺の北の方になってください」
「???はい?」
「ありがとう瑠璃!」
「???えええ~~~ちょっと、ちょっと待ってよ。一体どういうことよ!」
「だって瑠璃が俺を嫌う姫なんていない、そういったじゃないか」
「そりゃあいったけど」
「瑠璃も俺が嫌いじゃないとそういった」
「いったわね。」
「だったら俺と結婚してくれるよな」
「は?」
「悪い。瑠璃、性急だったな。
本当は俺は瑠璃がここで一緒に過ごしていたときから好きだったんだ。」
「え?」
「お前は吉野が好きだっただろう。
だからつい、お前をからかって少しでも気を引きたいとそう思っていたんだ」
「・・・」
「ずっとずっとお前だけが好きだった。
だから俺が愛した姫というのは瑠璃のことだよ。
俺が一生愛し続けるのも瑠璃だから。
他に沢山の姫君を迎えたとしてもそれでも一番はお前だから」
「鷹男・・・」
「悪いな、瑠璃、本当の気持ちを言って。ただ俺の気持ちを押し付ける気はない。
でも俺の気持ちはずっといまでも変らない。
吉野に気持ちがいっていたお前だったけどそれでも俺はお前が好きだ。
だから俺のことをよく考えてくれ。」
「鷹男あたし・・・」
「いまはいいさ、今日俺の本心を伝えたばかり。
だから気持ちに整理がつかないと思う。
だから今からでいい、俺のことをどう思っているかよく考えて欲しい」
「・・・鷹男・・」
「じゃあ~な瑠璃。でも俺への気持ちは悪いがすぐに考えて欲しい。
ここに居る時まで。
お前の気持ちを聞く機会はここでしかないんだ。ここで別れたら最後になる」
「え?」
「これがラストチャンスなんだ。」
「それはどういうこと」
「俺の気持ちに気付いた母上が俺にチャンスをくれた、
ここで瑠璃の気持ちを受けないと一生お前と会うことはない。
だから必死にここに来たんだぜ。
この場でお前の気持ちを貰えないと俺は一生後悔するから。
だからここに来た。
たった1週間だけどそれでも俺はお前が欲しい。
お前が俺を嫌っていることは知っていた。
それでも好きだから、だからお前に気持ちを言わずにいるより、
振られてもいいからお前に自分の気持ちをぶつけたい。
だから瑠璃も俺への気持ちを考えてくれ」
「考えろといわれても、あたしは・・・」
「瑠璃、せかしてすまん。でも俺には時間がないんだ。
だから・・・俺への気持ちを正面で考えて欲しい。
なんでもいい。俺への気持ちに本心をぶつけて見てくれ。
返事は明後日聞くからじゃあな~」
「ちょっと鷹男!」
自分の言いたいことだけをいって鷹男はいってしまったの。
あたしはただただ鷹男に言われた言葉にどう答えればいいのか戸惑うばかりだった。