好きなのに~渦巻く嫉妬の嵐9
あまりにも非常識のお願いにあたしの頭の中は思考停止した状態になっていた。
数秒経ってから小萩の驚きの声、悲鳴、そして鷹男に噛みつくような批難の嵐。
こういう時って不思議ね~
周りのものが大騒ぎをするとかえって自分は冷静になるみたいで鷹男を問い詰めることもせず
必死に小萩を止めることに夢中になっていたの。
このままでは小萩が何をするかわからない。
一女房であるだけなのにここまで東宮に批難するのは罪に問いかねないことになる。
鷹男はこんなに小萩に罵倒されているのに少し困った顔をしているだけで小萩を
咎めようとはしていない見たい。
あたしはそんなことを思いながら鷹男にどうして楓さんを預からないといけないのか聞いたの。
そうしたら楓さんは今物凄く嫌がらせをされていて仕事もままならないほど。
そのためそれに気が付いた鷹男が嫌がらせをされないところはどこだと色々考え抜いた末
あたしの所が一番安全なのではないか。
そう考えた見たい。
話を聞いて更に小萩は怒り狂っていたの。
「東宮様!それでは瑠璃さまに失礼ではありませんか?
瑠璃さまは言ってみれば東宮様のお后さまの一人であられます。そちらにおみえになる楓さんは
いい方が悪いですが誰からも認められていない妾のようなお方。
そのお二人を同列になさるおつもりですか?」
さすがに小萩の言い方に棘がありすぎると感じたあたしは小萩を止めたの。
「小萩!黙りなさい!」
あたしの一喝に小萩は少し大人しくなった。
「でも~瑠璃さま~」
小萩があたしのために色々言ってくれているのは分かっていた。
あたしだって全く納得がいかないのですもの。
でも何だろう~
この違和感は?
鷹男もこの楓という女も落ち着きを払っているこの姿は一体何?
本当だったら鷹男やこの楓の方がお願いに来た立場なんだからしんみりしてもおかしくないじゃない?
なのに二人とも堂々としている。
あたしは何か裏がある?
そう感じていた。
だからあたしは鷹男の言う通り楓を預かろうと思う。
承諾した途端小萩はあたしにも怒りをぶつけてきたけど
この楓という女の態度が凄く気になった。
肌がざわざわする。
一瞬あたしを見て微笑を浮かべたように感じたけどすぐに無表情に戻った。
その微笑に胸がざわつく。
あたしに喧嘩でも売るつもりなの?
だったらあたしがその喧嘩に乗ろうじゃないの。
この人の噂は今では知らない者がいないくらい有名だわ。
この人と鷹男は本当に愛し合っているのか?この人が鷹男の本命なのか
直接確かめようじゃないの!
あたしは色々な思いを胸に楓さんをこの麗景殿に預かることにしたの。
それがあたしの心に黒いものを呼び寄せることになろうとは夢にも思わなかったのよ・・・・