好きなのに~狂おしい愛憎の終結2
楓さんはただ黙ってあたしを見つめる。
何故何も言わずにあたしをただ見つめるだけなのか分からなかった。
でもあたしも楓さんを見つめはじめて気が付いたことがあった。
それは、あたしを見つめるだけじゃなくてあたしがどんな人間なのか探るような視線を感じたから。
その視線に気が付いた途端あたしは楓さんから目をそらすことなんて絶対に出来なかった。
これはあたしに喧嘩を吹っかけていると思っていいはずでしょう~?
あたしは鷹男の女御。
そして楓さんは鷹男の乳母の子でただの女房。
あたしとは全く立場が違う。
自分の立場を傘にする態度は自分は嫌なことだけど喧嘩を売られるようならあたしは買うわ!
最近ではずっと悩み、傷ついてきたはずなのに高彬の助けを貰ったおかげなのか
自分の気持ちが向上心に満ちていることにこのときのあたしはまだ気が付いていなかった。
ただ自分の気持ちのままに楓さんから目を離さないでいたの。
どれだけたったのか分からない。
でもあたしよりも楓さんのほうが先に目をそらしたの。
あたしはこのままここにいても仕方がない。
楓さんにこれ以上はなしかけたら何を言うか分からない。
嫉妬心を押さえ込みながら何も言わずにこの場を立去った。
しかし「女御様!お待ちください!」
先ほどまでだんまりを決めていた楓さんが急にあたしに話しかけてきたの。
「何か用ですか?」
「女御様、先ほどの件ですが一体どうしてなのか伺いたいのですが」
は!?先ほどの件って何!?
もしかしてあたしが女房達から楓さんを庇ったことなの?
「それってあんたを庇ったことかしら?」
「はい、そのとおりでございます。」
「あんたを庇ったわけじゃないわ。あたしは、ただ間違った態度をしている人間が目の前にいるのに
黙っていることが出来ないからよ。」
「しかしそれは女御様をお守りするために取った態度でございましょう。それが正しい女房の姿で
ございます。あなたに害をなすものへは致し方がないことなのですよ。」
「あんた何を言っているの?それがあたしのため?そんなものあたしのためじゃないわよ!
あたしはね、間違ったことをするのは絶対に許せないのよ!
いくらあんたが東宮様の寵愛を一身で受けて見える方だろうとも、あたしのライバルだろうとも
あなたをいじめることが正しいだなんて絶対にない!
あたしはそんなことされても嬉しくないわ!」
「それがこの後宮での常識でございますよ。あなたのために仕えている女房達のためには
女御様が女房達への理解をして深めていかなければならないのではございませんか?」
何ですって~~~~~~~~~~~~~~~
確かにこの後宮内では沢山の女御様やお手つきの女房達はいるわよ!
その争いがあるのは理解しているわ。今でも色々争っているんだから・・・・・
それも楓さんを潰そうといろいろな女房達が画策しているのに
それを後宮の常識だからってそれをあたしに当てはめて、ただ黙っていているなんて出来ないわ!
「そんな常識はいらない!あたしがこの後宮の常識を覆させてあげるわよ~~~~~~~」
思わずあたしはとんでもないことを口にしていたの。
その一言がこれまで以上に過酷なことになっていくだなんて全く気が付いていなかったのよ・・・