好きなのに~狂おしい愛憎の終結3
売り言葉に買い言葉。
あたしはとんでもないことを口にしていた。
後宮での常識や仕来りをあたしが変えて見せる。
後宮は何百年と続いた古い格式もある。
さまざまな常識や仕来りをこの新参者の女御であるあたしが変えるなんて出来るわけがない。
でも、こんな窮屈な後宮生活をもしあたしの手で変えることが出来るのならやってみたい。
そんな気持ちが沸き起こっていたの。
あたしのとんでもない発言に呆気に取られていた楓さんもすぐに元に戻り一瞬だけ
笑みを浮かべる。
そしてあたしにこう話した。
「さすがは普通の姫君ではない女御様でございますわ。ただし女御様はどうやって
そして何を変えるおつもりなのですか?」
「えっ!?」
確かにあたしは何を変えていけばいいのかサッパリ分からない状態だった。
だって売り言葉を買っただけなんですもの。
それでもあたしはこういいきった。
「窮屈な後宮なんていらない。あたしが愛する東宮様のためにホッとできる空間を作りたい。
そのためには沢山の不必要な仕来りなんていらないわ。」
「おほほ!そんなことが周りのものに通用するとお思いなのですか?」
「それは!?」
「いいでしょう~女御様のご決意、身近で確認させていただきますわ。ただし
女御様がお変えになるといわれた後宮の仕来り、作法、人間関係。後宮の何百年という古い歴史が
あるのでございます。それを全て女御様がお知りになりその上で変えていかなくてはなりません。
その教育係として私がお傍に仕えます。
いいですわね女御様。」
ええ~~~~~~冗談でしょう~~~~~~~
どうしてこうなんてしまうのよ~~~~
あたしはこういう後宮の窮屈な仕来りや作法が大嫌いだから変えようと思っただけなのよ。
なのに~それを全て分かってからじゃないと変えたらいけないわけ~~~~~
ああ~~~~~~難しくなってきたわ~~~~
でもあたしは売られた喧嘩を買ったんだから受けてたたないとだめよ!
「分かったわよ!色々勉強してこの後宮を変えてあげるわよ!」
ドンドン話がずれていくような気がするのだけどあたしはこのまま突っ走っていくしか出来なかった。
こうしてあたしはやりたくもない後宮の沢山の常識を頭に叩き込んでいくことになる。
その上昔から大嫌いな琴などの楽器の演奏から字の練習。そして歌の練習などなど
昔からずっと逃げてきた貴族の姫君が持つ武器を勉強しなおす羽目になるの。
今思えば物凄く大変なことでいつものあたしなら途中で諦めていた。
でもあの時は楓さんの言葉に反論しているつもりが上手に嵌められていることに
気が付いていなかった。
楓さんへの嫉妬心があたしをこうまで突っ走らせる原動力になっているとは気付きもせず
物凄い勢いで沢山のものを吸収していったのよ。
楓から連絡が入った。
ついに瑠璃姫が動き出したとのこと。
楓の文からは淡々とした内容ではあるが物凄いスピードで成長をし続けているらしい。
毎日文を貰うが楓は感情の起伏が乏しい面がある。
しかし淡々とした内容ではあるが昔からの付き合いのある私には楓がかなり瑠璃姫を
気に入っていることが伝わってくる。
さぞかし瑠璃姫は苦労なさっているのだろう。
瑠璃姫のことは楓に一旦任せて私は高彬の動きに集中しなければいけない。
瑠璃姫を救おうと高彬はついに動き始めた。
元々頭がよく機転が利く高彬。
自分が欲しいもののためにはあらゆるものを使って私の邪魔をしてくるだろう。
こう暢気にしている場合ではない。
それでもやはり瑠璃姫が気になってしまうのだ。
やりたくもない後宮のしきたりを必死で覚えている瑠璃姫をすぐにでも抱きしめたくなってくる。
でも今はできない。
もう少し・・・・もう少ししたらあなたを抱きしめてあなただけを愛します。
それまで待っていてください・・・・瑠璃姫・・・・