妄想の館

なんて素敵にジャパネスク二次小説(鷹男×瑠璃姫)

恋しくて4


写真素材 pro.foto

あたしは吉野から出たことがない。
吉野で生まれ、吉野で育った。
母様はお体が弱く京であたしを産むことができないため、静養を兼ねて一時期吉野で暮らしていたそうよ。
そしてあたしは無事に生まれたの。
でも生まれたばかりのあたしを京につれていくことは出来ず、あたしだけ吉野で暮らすことになってしまった。そして月日が経ってもあたしを母様も父さまも京に呼ぶこともなく、会いに来ることもなく寂しい生活をしていたわ。
幼い頃は両親に会いたくて会いたくて京にいきたくて仕方がなかった。
でも何度も両親に文を届けさせても、あたしは京へ迎えられることはなかったの。
そうしていつの間にか京へ行くのを諦めてしまったのよ。
あたしは吉野で皆と一緒に暮らせばいいと。
小萩たち女房達に囲まれて静かに暮らせばいい。
そう思っていた矢先、初めて父さまはあたしに会いに吉野まで来て、東宮様と結婚をしろとそういいつけて京へと戻っていったのよ。
あたしはそれを無視しようと思っていたのにご使者までよこして~
そのご使者も最低な男だったし。
あんなの脅しじゃないの!
行きたくもない京へ、その上好きでもない男の元に嫁ぐなんて冗談じゃないわ。
とっとと京へ行って鷹男から衣を受け取ったら、結婚する前に吉野に戻ってやる!
御車の中鷹男と視線があったけど、あたしは舌を出してアッカンべーをしてあげたわ。
早々思い通りにいかないんだから!






長い御車の旅も終点になった。
ようやく京に着いたようで御車は止まった。
一緒に居た鷹男が先に降り、あたしもそれに続いて降りていったの。
そしてその邸の豪華さと、大きさに凄く驚いたの。
見たこともないほど邸は立派で、

整備され素晴らしかった。
その上あたしたちが降りた瞬間、沢山の人たちが平伏しながら堅苦しい言葉で挨拶をしだしたの。
「瑠璃姫様、いいえ本日から昭陽舎に住まわれますから梨壺の女御様と呼ばせていただきます。
遠路はるばる遠くからのお越しおつかれさまでございます。
ゆっくりお休みくださいまし。
そして東宮様もお疲れ様でございますわ。無事に女御様を迎えれることが出来ました。
今上帝も喜ばれておりますわ。東宮様もお疲れでしょう。疲れをゆっくり取ってください。」

は!?
東宮様?
それって誰のこと?
あたしの他には鷹男以外いない。
まさか~~~~~~~~
あたしは真青な顔をして鷹男の方を見てみると意地悪い表情でにっこりと告げたの。
「私が東宮宗平。これからもよろしく。」
な~~~~~~~~~
「どうして言ってくれないのよ!騙したわね~~~酷いじゃないの!」
「騙すつもりはないが、まさかあんな歓待を受けるとは思わなかったからついいじわるをしてしまっただけです。」
むう~~~~~~~~
東宮様がまさか使者のふりをして吉野に来るなんて思わなかったわよ~~~~
鷹男が東宮様だったら絶対についてこなかったわ。
「あたしの衣を返して!」
「結婚してからと約束をしたではないですか?瑠璃姫は約束を守らない人なんですか?」
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ」
とんでもない東宮様にあたしは振り回されてばかり。
あれだけ緊張していたのにその緊張もほどけていったわ。ただ鷹男とお互い攻防しながら京一日目が無事に済んでいったの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あたしが京に入ってもう10日が経っていた。
最初は梨壺に入ったら強制的に鷹男との結婚生活が始まると思っていたわ。
なのに特例としてあたしはまだ鷹男の正式な女御にはなってはいないの。
どうしてまだなのかは知らない。
でもあたしにとってはとても都合がよかった。
無理やり結婚させられるようならお祖母様の衣を何としてでも取りかえして早く吉野に帰れるように動こうと思っていたから。
それなのに正式な結婚はまだで、拍子抜けしたわ。
その間少しずつだけどあたしに変化が見られていたのよ。
鷹男への悪意的な想いから徐々にあたしは鷹男を好きになっていった…
そうなるまでに時間はかからなかった。






















あたしは最初梨壺に入った時は泣いてばかりいたわ。
見知らぬ環境、初めての京、そしていつ結婚をさせられるか分からない恐怖でとても不安だった。
「もう嫌よ~吉野に帰る~帰りたい~ねえどうすればあたしは吉野に帰れるの小萩~~~~~」
「瑠璃さま、そんなに悲観なさらないでください。」
「そんなこといっても鷹男との結婚なんて嫌よ!どんな奴かよく分からないし」
「ですがそれが当たり前ではありませんか~~~身分の高い方たちほど会う機会なんてなく
初夜で初めてお互いが確認できるのですよ!」
「そんなこと知らないわよ!!!!!あたしは京で育ったわけじゃないわ!高貴な姫君として育てられたとしても、あたしにそれを享受することなんて出来ない性格だって小萩が一番知っているじゃない!」
「それはそうでございますが~しかし瑠璃さま、一体東宮様の何がいけないのですか?
ここ後宮東宮様の噂なんて簡単に仕入れることができましたが当代一と評判のお方ですよ。
多芸多才、文部両道、その上容姿端麗ではありませんか。小萩と代わって頂きたい位です」
「だったら小萩が変わって頂戴~~~」
「それは無理でございますわ。東宮様の生まれながらの婚約者は瑠璃さまただ一人。そう決められてしまっていますから~それに~~~~~~~~~~~
瑠璃さま、こう申してはなんですが瑠璃さまこそ今東宮様とお知り合いになられたのですよ。どんな方なのか知るチャンスなのではありませんか?
以前は吉野と京との遠い距離がありました。でも今は同じ敷地内に住んで見えますわ。
もう少し東宮様がどんな方なのかお知りになっても遅くはないと思いますけど。」
「それは~~~~~~~~~~」
小萩の言うことは正しかったと思う。
京に来て梨壺というお部屋を賜ったのだもの。
今さらじたばたしても仕方がないことは知っているわ。
吉野に簡単に戻れるわけがないことも散々小萩や他の女房達に事情を説明されているから分かっていた。
あたしが勝手に後宮を立去ることで自分の家族や内大臣家に迷惑をかけることなんてとっくに知ってた。

知ってはいるけど自分が納得するかは別問題でしょう。
あたしもそこまで子供じゃないわよ。
だけど無理やり連れて来られた事が納得行かないのよ。それも脅されてよ!!!!
あたし達には愛情はない。
愛がない結婚生活なんてあたしに出来るの?
好きじゃない人と一生を添い遂げるつもりなの?
自分では何もせず、数々の女御様を受け入れて、のうのうと後宮で傅かれる生活を喜んで受け入れる。そんなことがあたしの性分でできる訳がないわ。
あたしは身分が高いだとか、お金持ちだとかそんなことどうだっていいの。
好きな人と愛し合いさえすれば平民だろうがお金がなくてもあたしは楽しく過ごせると思うのよ。
そんな生活したことないから欺瞞だといえるかもしれない・・・けれど愛がない結婚生活なんてあたしにはどうしても耐えられないことだったから・・・・・・
でも・・・・・そんな風に思うこと自体おかしいのよね。
あたしみたいな考えの人は殆どいないわ。
そんな異端な考えを持つほうがおかしいのかもしれない。
でもあたしはあたしだから・・・・・
だからこそ怒り心頭なのよ。あたしを思うように動かそうとする鷹男のことがね!
このまま大人しく梨壺にいるのだけは我慢できなかったあたしは、女房たちの目を潜り抜けて
後宮探索を開始していたのよ。

























あたしが探索した先は部屋ではなかった。
すぐに階を降りて庭先を駆けていったの。
どうせ廊下にはウジャウジャ命婦や女房達がいると思ったから。
それよりも庭先を降りたほうがあたしにはあっている。
さまざまな趣向を凝らされた庭園たち。
そこを警護する者は沢山いるみたいだけれど上手に気配を消してあちらこちらへと駆け巡っていくのよ。
ふふふ~伊達に吉野の里を駆け巡ったわけじゃないのよ。
みんなの隙をぬって外に出るのなんて得意なんだからあ~
そう調子に乗ってあたしはどんどん先を走っていったの。
そしてヒューーーーーードン!ヒューーーーーーーーードン!
何か聞いたことがない音がしたの。

馬の嘶きも聞こえた気がした。
人の背丈ほどの木々をかき開いてその音の方向を見てみたの。
ドキッ!!!!!!!!!!!
そこには真剣な眼差しで的に向かって矢を引いている鷹男の姿があった。
ヒューーーーーーードン!ヒューーーーーーーーーードン!ヒューーーーーーーーーーードン!
全てが的に刺さり百発百中。不安定な馬の上で矢を撃つ姿。
初めて鷹男の真剣な姿を見たわ。
吉野で出会ったときも梨壺にきてくれるときもいつも余裕な姿であたしをからかってばかり。
そんな鷹男だからこそ、つい意地になってあたしも可愛げない姿を見せてしまうのよ。
もっと他に一杯鷹男と話たいことがあるのにいいあいばかりしてきたあたし。
あたしはしばらく鷹男をずっと眺めていたわ。
自然にその姿の素晴らしさにあたしは感心していたのよ。
あたしは真剣に見すぎていつの間にやら自分の気配を消すことを忘れてしまっていたの。
あたしの視線を感じたのか鷹男はあたしの方を振り向く。
あっ!?
あたしは思わず逃げてしまった。
だって凄く気恥ずかしかったんだもの。
今のあたしはただ鷹男に熱を浮かべた馬鹿な表情をしていたに違いないから。
でもあたしはそこから立ち去ることが出来なかった。
いつの間にか鷹男に手を取られてしまったから。
「待て!」
ドクン!!!
「何故逃げるのです?私に会いに来てくれたのではありませんか?」
あたしはこれ以上逃げることが出来なかった。
このまま手を振り払うことさえ出来たのに。
だって・・・・あたしは本当は鷹男が嫌いじゃなかったから・・・・・・・
むしろずっとずっと鷹男に会いたかったの・・・・・
会いたくて会いたくて、なのに鷹男はあたしに会いにきてくれなかった。
だから・・・・・・・
「あんたなんて嫌いよ・・・・・」
「えっ!?」
「どれだけあんたに会いたくても、あんたは会いに来てくれなかった。だからあんたなんて嫌い!嫌いなんだから!」
あたしはずっといいたかったことを口に出していた。
言いたくて言いたくてずっと吉野で想っていたわ。
口に出して言ってもそれを聞いてくれる相手はいない。
その辛さが鷹男に分かって?
吉野の里に押し込められたあたしはどうすればいいのか分からなかった。
分からなかったからこそあんたを嫌いになるしか出来なかったんじゃない!!!
「瑠璃姫・・・・・・・・・・・」
鷹男はあたしをしばらく見つめていたの。
あたしもしばらく何も言わずに鷹男をただ見つめるだけ。
そしてそ~っとあたしの目線に溜まった涙をすくいふわ~っとあたしを抱きしめた。
「瑠璃姫本当に申し訳ありません。待たせましたね、私の運命の姫君!私も幼き頃からずっとずっと思い続けていたのです。あなたに早く会いたいとあなたをいつ迎えにいけるのかと幼き頃からずっとずっと、ずっとずっとそう思っていました。それがこんなに待たせることになるとは思いもよりませんでした。本当にすみません!」
最初は優しい抱き方だったのに今はとても力強くその力強さにあたしは鷹男の心情が表れているかのように感じた。
あたしは恥ずかしくて視線をそらしていたけど今は鷹男を下から眺める。
ドキッ!?
あたしは自然に目を閉じていた。
そして上から柔らかい唇の感触を感じあたしは幸せをかみしめながら初めての接吻に酔いれた。
それからあたしは意地を張るのを止めて鷹男の言葉を少しずつ信じていったのよ・・・・・

 

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