妄想の館

なんて素敵にジャパネスク二次小説(鷹男×瑠璃姫)

星に願いを 中編


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あたしはひたすら歩いた。どこをどう歩いたのか分からず闇雲に廊下を渡っていく。

その時誰かとあたしはぶつかってしまった。

「一体何者です!」

厳しい女性の声が咎める。

あたしは誰とぶつかったのか顔を上げる。

その時あたしの顔に気が付いた女性が驚きの声を上げる。

「梨壺の女御様!」

誰?見知らぬ女性に名前を言われても分からないわ。

あたしの名前を呼んだ女性はすぐさま部屋の中に入ってしまった。

でもすぐにあたしに向かって部屋の中に入るように手招きをされたの。

あたしはそのままその手に招かれて中に入る。

それと同時に中の女房達は全て部屋を出て行ってしまったの。

「梨壺の女御、急に呼び止めてしまい申し訳ありません。あなたとは公式の場でしか話したことがありま

せんね。どうしてもあなたにお話したいことがあって呼び止めてしまいましたの。」

御簾越から伺う限り一体どなたなのか分からなかった。

とても儚く美しいお声だった。

「あなたも急な入内で大変驚いたと思います。あなたの父君である内大臣には無理を言ってしまって

もうしわけなく思ってはいるのです。しかし私がお産みした東宮とあなたを結ばせることは

御上のたっての願いでしたの。長年ずっと思い続けてきた想いを消化するためには必要なことだったので

しょう。」

いきなり淡々と話しかけられてもあたしにはこのお方が一体誰なのか実は分かっていなかった。

まさか自分からどなたなのかお聞きすることも出来ずただ話を促すことで精一杯だった。

これが、まさか長い長い苦しいお話になるとは思いもよらなかった。

「それは一体どういうことなのでしょうか?」

「私はずっとずっとこの後宮を守ってきました。御上の女御として後宮に上がり御上からもとてもよく

していただき幸せだったのです。私たちの結びつきは政治によるものが多く恋愛感情など必要はなかった

後宮に入って愛情を育めばよいのです。そうずっと教えられてきました。

御上はとても素晴らしく私たち沢山の女御を召しられても周りに湧け隔たりなく接して下さいました。

それは愛情ではなかったのかもしれません。それでも情が深まり私と御上の間にもその内東宮が生まれ

私は丞香殿の中宮という地位にまで登りつめることが出来ました。」

ええ!?この方が一度もあったことがないけど高彬の姉君で鷹男の女御様!

「しかし御上はけして私にもそして他の女御様たちにも愛を囁かれることは一切なかったのでございます

。それは統治者としてのけじめなのかとそう思っておりました。後宮での争いの火種になるものを

作らないように。そう思ってましたが本当は違っていたのです。ずっとずっと御上には本当に

愛するお方が見えたのです。」

なっ!?!?!?

「その方が一体誰なのか初めは分かりませんでした。

それがついにどなたなのか私は分かってしまったのです。私は本当なら聞くべきではなかった。

でも、つい盗み聞きをしてしまったのです。あなたの父君である高彬と御上の密談を。」

密談?密談って何を!

「ずっとあなたの母君である瑠璃姫様を愛し続けていたと、瑠璃姫様が身罷れても忘れることが出来なか

った。だからあなたを、瑠璃姫のご息女であるあなたを自分の分身である東宮のもとによこして欲しい。

そんなことを息絶え絶えに最後の遺言として話されたのです。」

「そんな!?!?!?」

そんなことってある?鷹男はもう既にいないの?この後宮内にはいない。

それだけではないは。もう二度と出会うことはかなわないじゃないの!

涙がボロボロ出てきてしまう。

あたしは今は自分の娘として何故かこの場に居るのよ。

それなのに泣くなんて中宮様に不審に思われるかもしれないじゃない。

でも・・・でも・・・涙がこぼれて仕方がないのよ。

あたしはどうして・・どうしてここまで鷹男に思われてきたのに信じることができなかったの?

あんなに鷹男が好きで愛していたのは高彬じゃなく鷹男だったのにどうして鷹男を

選ばなかったの!

こんなことってないじゃない!

あたしはあまりにも愚かな自分の行動に苛まれていた。

あたしは馬鹿よ!馬鹿よ!大馬鹿よ!

自分の気持ちを信じて鷹男に飛び込んでしまえばよかったのよ。

後悔の念でいっぱいになりあたしは今すぐここから離れたくなってしまったの。

部屋から飛び出した途端あたしはそのまま階から外に出た。

その時!とても綺麗な天の川があたしの視界めいいっぱいに入ってきたの。

そして、また流れ星が一つ流れたときまたここにきたときと同じように視界が真っ暗になった。

あたしはそのまままた気を失ってしまったの。