妄想の館

なんて素敵にジャパネスク二次小説(鷹男×瑠璃姫)

秘恋5

 


写真素材 pro.foto

 

高彬は順調に出世をして内大臣となっていた。

童殿上をしていた彬は今東宮様の御学友として

内裏に上がり、御顔めでたく将来は出世間違いなしだと言われるようになっていたの。

そして、彬が11歳の時元服

加冠役は太政大臣にまでなった父さまが

どうしても引退前にやりたいというから早まってしまった。

それに官位はなんと高彬が以前承った右衛門佐だった。

これは異例のことだったの。

それと同時に左大臣家の二の姫様と婚約も決まってしまった!

あたしはあまりのスピードについていけなくて呆然とするしかなかった。

女のあたしがこういった政治絡みなことに権限はない。

でも、11歳の息子が婚約って早くない?

産まれてすぐに婚約は聞くけれど

内には関係がないと思っていたの。

せめて結婚適齢期になってからでしょう。

何度も高彬に言ったけれど、

高彬もやむおえない事情だからの一点ばりだった。

彬の婚約を急ぐ理由はこの時のあたしは知らなかった。

なんで高彬はあたしに教えてくれなかったの?

彬の準備に忙しいあたしは高彬の身体の変化に気付いてあげられなかった。

仕事ばかりで内にこなかったし、

子供達を構ってくれる姿に安心して

高彬を優先してあげなかったことを悔やんだ。

それから高彬は、

彬が元服して数日後、病に倒れそのまま亡くなってしまった。

 

 

 

 

どうして!

なんで病に侵されたことを言ってくれなかったの?

せめて一言言ってくれたら

もっと一緒にいれたのに!

子供に構って高彬は二の次だったことを悔やんでしまう。

自分を責めてばかりで子供達に心配をかけてしまっているのだろう。

これで高彬が彬の元服と婚約を早めた理由がわかったような気がしたの。

だって高彬がいなくなってしまえば家柄がよくてもあたしたちは

路頭に迷うかもしれないから。

だからせめて彬には官位と後ろ盾になる妻を用意したかったのだろう。

でもだったらどうしてそれをあたしに相談してくれなかったの!

そうしてくれたらよかったのに!

あたしのことを信頼できなかったのかな?

あたしが高彬を裏切ったから。

だから天罰が落ちたんだ。

あたしはそんな不吉な思いでいっぱいだった。

そんなあたしのおかげでなのか

三条邸は今までの活気にみちたお邸ではなくなっていった。

女主のあたしが元気をなくしてしまったから・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなある日のこと、皆に気を遣わせていることに気がついたあたしは、

自分に元気をつける為、久しぶりに三条邸の庭に降りていた。

この三条邸は以前火事で新しくしたから

高彬と一緒に遊んだ思い出の庭ではない。

けれど父さまが以前と同じ造りにしてくれたから

あの頃のあたしについて回った子供の高彬がまだいるかのように思える。

そんな庭先に子供二人の声が聞こえる。

 

 

 

「安親〜お相撲さんごっこしよう~」

「愛理姉さん、負けても怒らないでよ!」

「怒るわけないでしょう~あんたよりあたしは年上よ!」

「でもわざと負けると怒るじゃないか!」

「そんなことしないし、いつあたしが負けたっていうのよ!」

「姫様、若様、喧嘩はおやめ下さい!」

 

 

あたし達はあんな風に毎日を過ごしていたわ。

無茶をするあたしの後を高彬がいつもついて回って心配そうにしていて。

あたしは子供のころ極度の負けず嫌いで、高彬に負けたくなくて

何度意地を張ったか。

でも高彬がいたからこそ、沢山無茶ができたのを

あんたは知らないでしょうけど。

あたしもいい加減前に向かないといけないわね。

 

「愛理、安親、母様もお相撲さんごっこ相手にしてやってもいいわよ。」

「北の方様~~~~~~!」

「瑠璃様~~~~~~!」

だって見ていたらやりたくなっちゃったんだもの。

でも口に出すだけで冗談なんだから。

「冗談よ。」

あたしがそう言ったら愛理以外が大げさにほっとしたような表情をしたのよ。

愛理だけ残念そうだったけれど、さすがに大人のあたしがやっては愛理も裳着を済ませ

た後にやりそうだから自重したけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し元気を取り戻したあたしだけれど一つだけ問題があった。

それは鷹男から再度文が開始されたことだった。

さすがに恋文じゃないけれど、高彬へのお悔やみ文とあたしへの気遣いの文が毎日届いた。

鷹男も相当落ち込んでいると聞くわ。

もうお互い年だし鷹男も何度も床に臥せるようになったと聞く。

鷹男まで失ったらあたしは一体どうしたら・・・・

もう若くない身の上、いつ逝くかは分からない。

あたし達より年下の高彬が先に逝ってしまったんだもの。

そう思っていたときのこと久しぶりに彬が実家に帰ってきたのよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お久しぶりです、母上」

「立派になったわね彬。その姿は高彬の右衛門佐だった衣装と同じものね。

懐かしいわ~背丈もだいぶん伸びたわね。」

「はい、父上と母上のおかげでここまで成長ができたと思っています」

「彬、あんたは高彬と同じで生真面目ね。母様と話す時くらい

言葉を崩してもいいのよ。」

「そういうわけには参りません。父上も母上も私にとっては

大切で、尊敬に値する方々ですから。」

あたしの顔で性格がいつの間にやら高彬そっくりになっていた彬。

小さい頃は鷹男にそっくりだと思っていたのに、今は高彬そっくりだわ。

「母上、大切なお話があります。まずは人払いを。」

パチン

そうして女房達は部屋から出て行きあたしと彬の二人だけになったの。

「話を改まってどうかしたの?」

「父上のことです。」

「高彬のこと?」

「はい、実は父上がなくなる前に言いつかっていたことがあります。」

「何か言われていたの?」

「そうです。私が元服した日に遺言を受けていました。」

「遺言って!」

あたしは何も聞いていない。高彬が病気だったことも知らなかったから

倒れたと聞いたときは、症状は軽いと勝手に思っていた。

なのに高彬の傍についたときは息も絶え絶えであたしには理解できなかった。

それから数日後高彬はあたしと子供たちの幸せを願いながら息を引き取った。

「今度こそ幸せになってほしい」

それが高彬の最後の言葉だった。

何よ、今度こそって!あたしはあんたの傍にいて幸せだった!

子供を三人も授かり高彬が傍にいてくれてずっと幸せだったのに

今度こそ幸せになれってあたしが不幸せだったみたいじゃない!

そんなこと思ったことなかったのに!

高彬は最後まで誤解していたに違いない。

あたしは本気で高彬のことを愛してたんだから。

「父上は母上が自分のほかにも愛する人がいたことを知っていました。」

「そんなの関係ないじゃない、あたしは結局高彬を愛したんですもの。

昔の恋なんて関係ないわよ!高彬はあたしを馬鹿にしてるの!」

「違います!」

珍しく大きな声で彬が叫ぶ。

あたしは驚いてしまった。

親に逆らうことなんてしたことがない彬が大声で怒鳴ったんだから。

「母上違うんです。父上も母上の気持ちを知っていらっしゃいました。

ただ、父上がなくなった後のことが心配だった。だからこそ

母上に素直になってほしいとそうおっしゃっていました。」

「素直ってなんのことなの?あたしは高彬以外好きな人なんて

いない・・・・いないに決まっているわ。」

「お主上も・・・」

「え!?」

「父上はお主上のことも案じてお見えでした。一番長く傍に仕えた

父上がいないことで、どうなってしまうのかって。

だからこそお二人のことを案じて見えたんだと思います。」

「でも・・・あたしは高彬の妻だったし一生高彬を思って尼にでも!」

「母上!いい加減にしてください!母上は父上だけじゃなく

違う殿方のことも好きだったんじゃありませんか?」

「違う!」

「違わないです。だって母上が大切にしている文。あれは母上の

お好きな人の文ですよね。」

「なんでそれを・・・」

「母上は気が付いてらっしゃらないでしょうが、その文を読んで見えるときの

母上は特にお美しかった。誰を想っていたのか・・・

私はあの時父上からの手紙だと思ってましたよ。

けれど父上は寂しそうにその姿を見て見えました。」

「あなた達見ていたの。」

「だって母上は凄く大切にしていましたし、

決して見せてくれませんでしたよね。

それにその文に興味をかられて一度見てしまったのですよ。

母上申し訳ありません。」

「なんですって、だったら中身は!」

「いえ内容までは見ていません。ですが筆跡は父上とは違うものでした。

そして元服して初めて知りました。父上の言っていた人というのは

主上のことだったのかって。母上とお主上の間に何があったか

分かりません。どんなことがあったって、父上は母上もお主上のことも

お慕いしていらっしゃったのです。お二人の悲しむ顔よりも

笑っている顔を見せてあげてください。お願いします。」

「彬・・・・」

あたしは驚いていた。

高彬があたしたちのことを彬に託していたことに‥‥

なんであんたっていつもそうなのよ。

言葉が足りなすぎなのよ。

あたしがしたいことを何も相談もせずに行動するなんて・・・

でもそうよね、せっかく天国に行った高彬に悲しんでいる姿を見せたくないわ。

あたしもいい加減鷹男とのことを考えないといけないわね。

いつまでも先延ばしはいけないから。

あたしは自分の気持ちに決着をつけることになったのよ。

 

 

万葉集より)

さつきまつ 花橘の香をかげば 昔の人の袖の香ぞする

 (現代訳)

五月の橘の花の香りに、昔の人の衣に焚き込まれていた香を思い出します。

 

 

あたしはついに鷹男宛てに、文を返信することとなる。

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