妄想の館

なんて素敵にジャパネスク二次小説(鷹男×瑠璃姫)

秘恋6


写真素材 pro.foto

 

私の名前は彬という。

父は右大将、母は内大臣を父に持つ今一番権力を持つ家柄の

家に生まれた。

私はいい家柄に生まれ、何不自由なく育てられた。

普通の貴族は父が一人で母上が沢山いるのが当たり前であり

父親は時々しか妻の実家に寄らないのが一般的だ。

だが内の場合は貴族には珍しく、父上は母上以外妻を娶らなかった。

私には妹と弟がそれぞれ一人ずつ存在し、寂しい思いをしたことがない。

父上は仕事が忙しく、内に寄ることは少なかったが母上も厳しいながらも

愛にあふれているし、妹も弟も可愛くて毎日姉弟の世話焼きをしていた。

そんな私にある出来事ができた。

それは童殿上で今東宮様の御学友に選ばれたからだ。

東宮様とは従兄弟にあたる。

父上の姉君である丞香殿女御様との間にできた御子様。

私には妹弟以外仲のいい友人がいない。

東宮様と友人にはなれないかもしれないが、他の貴族の子息たちとの

出会いはあるかもしれない。

だから楽しみにしていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして初めて御所に入った時の豪華で大きな門に私は惹きつけられた。

内も大きなお屋敷だと皆が言うけれど、さすがはこの国の中心。

建物は全て素晴らしく高級木材で建てられていた。

木の細工も細やかで見ているだけで一日中いられるほど全てが

素晴らしかった。

ゴミや塵一つ見当たらない綺麗な場所。

落ち葉の一つも落ちていない。

それだけ沢山の人たちがここで働き、主上に仕えることを喜びとして

いるのだろう。

私もいつか、官位をいただき、この御所で働くことになる。

どんな官位でもいい。

だからここでどうしても働きたいと強く願った。

それから少し経ってから、東宮様と接見することがかなったのだ。

 

 

「初めておめもうじつかまつりまする、名を彬と申します。

以後よろしくお願いいたします。」

「私の名前は宗鷹だ。お前は右大将高彬殿の御子息だという。

そなたは父上にそっくりだな。」

「そうでしょうか?顔は母にそっくりで、子供の頃は

母上に似ているとよく言われたものですが。」

「その物言いといい、その態度、雰囲気。

真面目な大将の性格にそっくりだよ。」

「そういわれることを誇りに思いまする。」

「なあ~彬、その言い方は変えれないのか?私よりも年下だと

聞いているよ。」

東宮様に向かって言い方を変えるなど、無理に決まっております。」

「お前も、東宮としか俺を思えないか?」

東宮様は東宮様でございます。

ですが東宮様といえど子供です。もし悩みがあるのでしたらこの彬に存分に

お話しください。話を聞くことしか私には今できることはございませんが、

甘えてもらっても構いません」

この言葉に周囲がざわめきだつ。

「甘える?」

「はい、母上が言っておりました。

主上東宮様もその名前の重責を担っていると。その立場は

他の人間が務まるものではない。だからこそ、その立場を理解して

ずっと側にいてあげる存在が必要なんだとか。

その役目を若輩ながら私めでは駄目でしょうか?

あなた様を一目見て、母上のお言葉が頭に浮かびあがりました。

僭越ながら、東宮様の役に立てるようこの彬、一生お仕えしたいです。」

「・・・・・・・・・」

「あの!初めてなのに不躾な言い分申し訳ありませんでした。

お怒りなのは分かります。

年下なのに生意気を言って申し訳ありません。

まだ8歳だというのに生意気すぎました。」

私はなんてことを言ってしまったんだろう。

最近は年齢に相応しくないほど大人びていると言われるようになった。

それはひとえに、姉弟達がはしゃぎすぎるから

心配してブレーキ役を担うようになったからに違いない。

生意気すぎて東宮様の怒りを買ってしまったのかもしれない。

だったら早急にここから離れなくては。

両親には申し訳ない気分だ。

私はあわてて部屋から出ようと思った。

東宮様、失礼いたしました。」

そう言い立ち上がった瞬間

「待て⁉」

急に東宮様が立ち上がって私のところにまで来てくれた。

そうして私の手を急に引っ張る。

その途端、私たちはバランスを崩して倒れてしまったのだ。

その姿に周囲の人間たちが慌てだしたが、東宮様が許してくださったので

この件は咎められなかった。

私はこの件でご学友の話は流れたと思っていたのに

かえって東宮様に気にいられたのか、毎日東宮御所に上がり

東宮様の話し相手になることになるのだ。

そうして、長いこと交友を交わし、恐れながらもお互いを

友人だと認識できるようになったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから3年、父上から元服のことを話された。

父はすでに右大将から内大臣に、祖父は太政大臣となっていた。

私は早く元服をして東宮様の役に立ちたいと思っていた。

だからこそ元服が早まるのは嬉しかったのだ。

ところが元服と同時に婚約話が出たことに私は驚いていた。

実のことろまだ私には早いと思っていたからだ。

左大臣家といえば、内とはほとんど縁がない。

元々右大臣家内大臣家は婚姻関係で仲が良く、そのことで

他の貴族たちからやっかみを抱かれていたはずだ。

父上の表情から、この婚約は父上が進んだことじゃないに違いない。

だが、一部の貴族に権力が集中するのも父上としては

嫌なのだろう。

本人に権力欲はなくても、家柄は名門一家。

その長男として生まれた私が、右大臣や中納言の血筋の家に

通ったとなれば、また問題になるのだろう。

まだ幼い私には、そこまで貴族のことは詳しくはない。

だが、よく宴を催した折、酔っ払いたちが私たちの前で

子供だからか大きな声で話している姿を、たびたび見かけていた。

それを見ると、父上は相当やっかみを抱かれているのだろう。

その対抗馬になりつつあるのが左大臣家となる。

だから私はその家とのつながりのために婿になるのだろうか?

それにしても父上の顔色が悪い。

「父上大丈夫なのですか?」

「何がだい?」

「顔色が悪いようですが、無理をなさっていませんか?」

「そんなことはないよ、ただ最近仕事疲れが酷いからじゃないかな?」

父上は顔に手をやり私をごまかそうとなさる。

そのしぐさは私にウソをおっしゃっている証拠だ。

「父上、それだけではありますまい。元服だけならまだしも

私の婚約が決まったのが原因なのではありませんか?」

「ななな何を!」

「父上の嘘は私からすれば分かりやすいですから、それに

本当にお体は大丈夫なのですか?今もふらふらなさっていますよ。

早く床についてお休みくださいますようお願いいたします。」

「はあ~彬は一体誰に似たんだろうか?その年で慧眼だよね。

瑠璃さんにさえばれてないのにどうしてわかるんだろうか?」

「父上が分かりやすいわけではありませんが、ここ最近邸に来ても

すぐに帰られますし、

家族の前では元気な姿を見せていますが居ないところでは

ふらついている姿を何度かお見掛けしましたよ。

父上が黙っているので誰にも言っていませんが。」

「そうか、お前にはばれていたのか。だったら彬、お前はもうすぐ

元服を迎えて成人になる。

だから私の代わりに瑠璃さんや子供たちを頼むよ。」

「何をおっしゃってるんです!まだ父上は元気でいらっしゃる。

体を休めれば復帰なさると私はそう信じておりますよ。」

「彬、僕はね、病を患っているんだ。」

「な!それは本当なのですか?」

「ああ~主上がわざわざ自分の侍典医にまで見せてくださったが

僕はもう治らないんだ。」

「なんとかならないんですか?」

「ならないからこそ、彬に頼んでいるんじゃないか。本当なら

まだ11歳になる彬に頼むことじゃないのは分かってる。

でも時間がないんだ。」

「だから私の婚約を左大臣家にされたんですか?」

「そうだよ、僕が亡くなったら手のひらを返したかのように、

内大臣家に離反するだろうね。

だからこそ、元服と同時に婚約を発表しようと思った。

彬には悪いと思う。君は将来有望だから

取り込ませたと思わせておいたほうが何かと便利だからね。」

「父上って思ったよりも悪い人なのですね。」

「貴族だからね。色々な人たちを相手にするには利用することも大事だし。

それよりも彬には苦労を掛ける。悪かった。

もし僕がいなくなったら婚約破棄になって

内が潰れる可能性もなきにあらずだから

君の腕次第だと言えばそうなっちゃうからね。」

「そこは大丈夫です、父上お任せください。

私は東宮様の元から離れたくないですから、官位さえいただければ

何とでもなると思います。」

「官位かあ~元服が早いからね。無官かもしれないし

しばらくは殿上人になれないかもしれない。

そこは主上次第になるね。」

「そうですか。しかし私も精進したいと思っています。」

「僕も病さえなければ、君たちをずっと守りたかったのに・・・

すまない彬。」

「父上が悪いわけじゃないので謝らないでください。

ですが私が父上の代わりにこの内大臣家を守っていくことをお誓いします。

ですから気になさらないでください。」

父上はしんみりとした表情だった。

まだ32歳で平均的であるが、幼い子供を残すのは無念なのだろう。

そこには私も含まれるし、何よりも母上のことがある。

最後まで居たかったに違いない。

だが寿命というものは必ずしも起こるもの。

何があるかは分からないが父上に頼まれた以上、

私は家族を守る。

そう固く誓ったのである。

 

 

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