妄想の館

なんて素敵にジャパネスク二次小説(鷹男×瑠璃姫)

初恋~叶わぬ思い~2

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あれから数年が経った。

桜の君がいったすぐに会えるという言葉を信じたが、結局会えなかった。

暇があればすぐにあの桜の木の下に行くのはもう日課になってしまっていた。

そんなある日、誰かが桜の木の下にいることに気がついたのだ。

気が焦りまさかと言う思いが強かった。しかし、私の想い人ではなかった。

だが、この場所で会う人物でもなかった。

その方はなんと私の父上である今上帝であった。

私がこの桜の木の傍に近づいたとき、帝は私に気がついた。

そして驚いた表情を私に見せた。

滅多にそんな表情など見せたことがなかった父上の顔に

私も驚いてしまったのだ。

東宮、何故そなたがこの場所に」

「私は幼い頃から桜が満開に咲くところを見て

それからこの場所が私の特別な場所になったのです。

ですから今は桜も咲いていなくても、何故か足を運んでしまうのですよ。」

「そうか・・・」

今上帝は何に驚いていたのだろうか?

何故だかその言葉で私がここに来たことに驚いたというよりも

違う理由があるようにも思えた。

父帝は私の父親ではあるがこの国を治めなければならないお方。

だからいくら私が唯一の親王だとはいえ

私だけを特別扱いなさることは一度もない。

たえず私が東宮であるように厳しく私に接してくださった。

帝が私に優しいところなど殆どなく

帝としての顔しか私もみることは適わなかった。

だからこそ帝の驚いた態度に私は驚くしか出来なかったのだ。

私のその態度に帝は気づかれることもなく昔話を私に話してくださった。

東宮。そなたは誰か好きな女性などはおるのか?」

「はい、います。」

「そうか、しかしお前は東宮

だからこそお前は自分が愛した人間を傍におけるかどうかは

自分でよく考えなくてはいけない。

お前ももうすぐ元服するときが近づいてきたな。

さぞや麗しい若い沢山の女御がお前に仕えるのだろう」

「父上、私は愛する人と一緒になりたい。それは適わないものなのですか?」

東宮、私達の結婚というのは全て政治がらみになってくるものなのだよ。

だから好きだからすぐに結婚できるわけじゃない。

お前の結婚というのはお前だけじゃない。

お前に嫁ぐお方の家族までも関与することなのだよ。

だから好きじゃないからその方と不仲になるようなことは

けして許されないのです。

私達帝や東宮とは入内した女性をわけ隔たりなく愛する、これが

政治というものなのですよ。」

「確かにずっと私は東宮として立派に父のような

帝になれるように努力してきました。

でも、やはり好きな人を傍におきたいのです。

だから父上はもう母上がお亡くなりになってから

一人以外、もう女御さまを娶られにならないのでしょう。

我が母上を愛してみえるから」

東宮。そうではないのですよ。

もう私にはお前のような立派な跡継ぎもいるし内親王もいる。

だからこれ以上跡継ぎを増やしても後宮が荒れてもいけない、

だから私はもういいのですよ。」

「帝はもう他の女御さまを娶ることはしないとそういうことなのですか?」

「そうですね。もう新しい女御は必要はないでしょうね。

しかし私には一人だけ愛する姫君がいたのです。

その方が入内に納得してくださったら、

その方だけは私の傍にいて欲しいものですがね。」

「え!帝に想い人なんてみえたのですか」

「・・・初恋でしたよ。」

「初恋?」

「そうです。しかしその姫は自分の意思で私に入内なさるのをお断りされた。

だから私はあの方に振られたのですよ。」

「振られた。」

そんな・・・帝が希望なさったのなら絶対に貴族の姫だったら

断ることなんて、ありえない。

もし断ったりしたらその貴族のお家自体断絶されるもの。

なのにありえない話だ。ふと思ったことを聞いて見た。

「それは身分が低すぎたから入内させれなかったからではないのですか」

「違います。あの方のバックはしっかりしている貴族の姫君でしたよ。」

「信じられません。どうしてその姫を無理やりにでも傍に置かなかったのですか?

私だったら自分が愛してその上身分がつりあっているのなら

絶対に手に入れておきたい。

帝は何故手に入れなかったのです。それだけ想いは薄かったのではありませんか」

「そんなのではない!」

あまりの帝の声の大きさに私は吃驚してしまった。

「姫には私の他に婚約者が見えた。

だからどちらかを姫自身に決めて欲しかったのですよ。」

「私はやはり帝が理解できません。

私達には愛というものは個人的にすることは許されません。

ですが自分が愛した姫が傍にいるならそれだけで自分は頑張れます。

それなのに帝はただ姫に選ばせただけで、その勝負に逃げただけではありませんか?

私は絶対に逃げたくない。私は何があっても

自分の初恋の君を傍においておきたい。」

私は帝の言葉が重く胸に響いた。

自分達の結婚は簡単な問題ではない。

だから私が桜の君を入内させることなんて出来ないかもしれない。

それでも帝のように動くこともせずに、

相手に選ばさせるだけなんて信じられなかった。

私はまだ元服前の子供だった。

だから大人の思惑に全く気付くことなど出来なかったのだ。

 

もうすぐ私は元服しなくてはいけない時期が近づいて来た。

私は13歳の歳で元服式が行われる。だから私は元服式が済んだら

もっと生活に制限がきたすはず。

だから今の内に外にでておこうと思い、

亡き母の御実家である右大臣邸に今滞在しているのだ。

後少しで私も大人として、そして東宮としてやっていかなければならない。

私は皆に内緒で右大臣家の庭に出た。

丁度春ということで本来なら桜の季節でもあるが

この邸は梅がとても美しいと評判の場所。

だから一人で梅の花でも愛でようと思った。

日は落ちもう外は完全に暗くなっていた。

しかし月が美しく外が暗くても迷うことはない。

昼間に見つけた梅の木の場所まで歩いていった。

そうしたら私の他に誰か先約が見えたのだ。

その方は・・・・・

あの桜の君だった。

彼女は梅の木の下でただ何事かを考えている様子だった。

あれから8年も会えなかったというのに

彼女の姿はあの桜の木の下で出会った頃と全然変っていなかった。

私はすぐに声をかけることなど出来なかった。

私が声をかけただけですぐに姿を消すかもしれない。

そんな不安に包まれていた。

どれだけ桜の君を見ていたのだろう。

そうして彼女はただ何もいわずに微動だにしなかったのに

くしゃみをされた。思わず私は自分の布を桜の君に手渡したのだ。

「今は春とはいえ寒い時期です。風邪でも引いたら大変ですよ。

どうぞこれをお使いください。」

「???あんたは・・・あれ?見かけたことがあるわよね。」

「はい、いつぞや御所の桜満開の時、あなたは私に

もう一度会えるとそう残して、私から姿を消しました。」

「ふふっそうだったわね。大きくなったわね。東宮さま。」

「桜の君、あなたから東宮とは言われたくありません。昔のように呼んで頂きたい。」

「あらそうなの。ふふ、甘えているのね。宗義、凄く大きくなって・・・

久しぶりだわね。

こんなに大きくなるなんてあたしも年を取ったわね。」

「そんなことなんてありません。

あなたは初めてお会いした時から全然変ってないですよ。

とてもお美しい。」

「口が上手いのね。さすがはたか、お主上の御子さまだわ。」

「確かに私はお主上の子供ですがあなたにまで同じ扱いをされたくありません。」

「ごめんなさいね。ついね、お主上のことを思いだしてしまったから。」

「どうしてあなたに会うことはできなかったのですか。」

「そうね、宗義と出会ってから本当ならすぐに会う予定だったんだけどね、

会えない事情が出来てしまったのよ。

だからあれから全然御所に上がることも出来ず

だからあんたに会いにいけなかったのよ。

ごめんなさいね。宗義、もしかして待たせてしまったのかしら。」

「そうです、私はどれだけあなたに待たされ続けたか・・・」

桜の君はすぐに申し訳ないような表情で謝られた。

桜の君の謝罪がなんだか私にいっているだけじゃなく

他の誰かにいっているくらいに切なかった。

そして気付いたのだ。彼女は静かに泣いていたことに

私は彼女がどうして泣いているのか分からなかったが

早く泣きやんで欲しくて

まだ自分の方が体は小さいのに、桜の君を抱き寄せた。

桜の君は吃驚されたようだったが

安心なさって私の体をさらに抱き寄せてくれた。

 

 

 


それからどれだけ経っただろうか、

時折桜の君は誰かの名前を呼んでいたようだったが

その名を聞くことは出来なかった。

私はまた桜の君に会いたいことを口に出したが

この右大臣邸にはどうもお忍びで入ってきたようで

私がここに滞在している間に来ることは適わないとそういわれた。

私はなんとしてももう一度お会いしたいといったが

今は忙しくて、もうこれないとそういっていた。

私は桜の君に誰の名を呼んでいたのか聞きたくていったのだが

その名は聞くことは出来なかった。

代わりに

「宗義は鷹男と言う殿方に本当に似ている」

とそうおっしゃられた。でも鷹男が誰なのか、それさえも教えてくれなかった。

もう会うことがない殿方だとそう寂しそうな表情をされるだけ

でも囁いた名前と鷹男という殿方は違う。

ただそれだけは違った。

何故だかそれだけは私に分かったのだから。

そうして私は桜の君と元服前にはもう出会うことは出来なかった。

私にはもう元服をして東宮として知識を頭に叩きこみ

少しでもよい統治者にならなければいけない義務があったのだから。

そうして私は元服するにあたり添い節の女性と一夜を共にして

それからして彼女は私の初の女御となった。

彼女はある宮家の女性で後ろ盾もかなり弱かった。

しかし何故彼女が私の添い節になったのか・・・

それは右大臣家の力がかかっていたから。

大臣家には今丁度私の年と近い姫がいなかった。

いずれは右大臣家の血を引く姫を東宮妃に迎えたい。

だからこそ今、添い節にたったら右大臣家に背くものとして

敵対しなければならない。

そんな事情があり、後ろ盾が弱い宮家の姫君が右大臣家には都合がよかったのだ。

私は桜の君を忘れることは出来なかったが

東宮として私に入内した姫君は

女御として大切にしなければいけない義務がある。

だから私は心を封印して女御を愛することにしたのだった。

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