妄想の館

なんて素敵にジャパネスク二次小説(鷹男×瑠璃姫)

信じたいのに9

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今宵は月の宴。

仲秋の名月を愛で、団子や薄を供えて詩歌管弦の遊びをする宴である。

代表に選ばれた貴族たちが自分たちの楽器を披露している。

美しい月を愛でながら楽器の演奏を聴くのは風流であり素晴らしかった。

私は御帳台に納まっているが皆を見渡せる位置にいる為

周囲の姿が他の者たちよりも分かりやすい。

その中で気になったのが龍笛を吹いている左右の右衛門佐である。

意地を張っているのか、お互いが意識しているのは明白であり

二人は全体を見ているというよりも自分達しか見えていないのか

やや楽器が乱れることがしばしばあった。

だが、さすがに私が聞いているさなかに音が止まることもなく

その場は治まったかのように見えた。

二人は演奏が終わりその場を離れはしたが

少し離れた場所で諍いを始めているのが見える。

遠くでやっているため、声は聞こえないが、二人の喧嘩が始まりそうで

次の演奏に集中することができない。

周囲の者たちは私の方を見ているため、誰も喧嘩に気が付いていない。

その時だった。

ある女房が二人に近づいて何かを囁いていた。

その瞬間、真っ蒼になった二人はすぐに諍いを止めて離れていった。

あの女房は見たことがあった。

そうだ、瑠璃姫付きの女房だ。

彼女も気が付いていたのだろうか?

そっと彼女の方を見ると、先程の女房をねぎらっている姿が見えた。

他の者たちは演奏に聞き入っているというのに、瑠璃姫は周囲の気配りが

出来るお方だ。

その姿を見て、私は一体瑠璃姫の何を見ていたのかと恥じていた。

それからは、瑠璃姫の女御としての姿を見ていると

立派に努めている姿がうかがえた。

だが、普通の女御と違い、周囲への気配りが気が付かれない程度に

立ち回れている姿を垣間見える。

この前も、どこかの女房が貴族たちに酒の酌をしている時だった。

私がいる前では皆そんなに無様な姿は見せないのだが

その日に限っては飲みすぎてしまったのか、やけに女房に

べったりと近づいて押し倒そうとする姿が見えた。

その時、違う女房がお酒の酌を代わり、上手にその貴族を持ち上げて

恥をかかせることなく、その場は治まることになった。

その女房も瑠璃姫付きの女房だった。

彼女の方を見ると満足げな表情で女房を見つめていた。

全て瑠璃姫が、何か起こりそうになった時、陰でフォローなさっていたのだ。

その慧眼に私は驚いた。

元々勘がよく行動力のある姫だった。

だが行動が直接的過ぎて周囲から野蛮だと悪く言われていたのが今ではどうだ、

女御としての務めを精一杯勤めて見えるではないか。

あんなに貴族らしいことが嫌いだと言っていた姫が

私のためにと努力している姿を目の当たりにして

私はあんなに疑心暗鬼になっていた己が恥ずかしくなってしまう。

私は瑠璃姫をそっと見つめ続ける。

そうしたら私の視線に気が付いたのか瑠璃姫は顔を赤くして

私の視線から逃れてしまった。

そのしぐさにずっと蟠っていた思いが昇華するように思えた。

瑠璃姫は変わっていない。

瑠璃姫は瑠璃姫らしかった。

私は愚かだった・・・・・

自分のおかげで随分瑠璃姫との心の距離が大きく離れてしまった。

彼女を傷つけてしまっただろう。

だからこそ少しでも近づけるように

努力をしなくてはとそう思えるようになっていったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

夜の寝所で私は久しぶりに瑠璃姫を指名した。

口上は藤壺の女御らしく丁寧な物言いに、私は今までであれば

残念な気持であったがよくよく見ていると、彼女も久しぶりなのか

緊張をなさっている姿がうかがえた。

最近では女御らしく繕って見えたためか私には弱さを見せてくれず

疑心暗鬼になっていたが、それを取り払えば

相変わらず初心な姿にそそられる。

「瑠璃姫、そう緊張なさらずにいつものあなたでいてください。」

主上、私はいつもと変わらないですわ。」

単衣で顔を隠されてはいるが、最近ではまともに話をしていない私が

話しかけたことで動揺されて少し震えて見える。

「瑠璃姫・・・」

そう愛する彼女を呼びながら抱きしめると真っ赤な表情で

見つめあうことになる。

あの毅然とした藤壺の女御が、私の腕の中では愛らしい姫へと

変貌する姿を目の当たりする。

彼女の香りをかぐと落ち着くかのようだ。

あんなに心が離れていたのに、ただ抱きしめただけで愛おしく感じるのは

私の心情の変化が大きいのだろう。

腕に抱きギュッと離さないといわんばかりに彼女を抱きしめる。

「鷹男・・・・どうかしたの?」

私を心配する声を聴くだけで安心する。

もうあなたを離したくない・・・・・

腕に抱くだけで自分の体が昂ぶり、早く彼女を自分のものにしたくて

何も言わずに彼女を私のものにする。

話をするのさえ勿体ない。

ああ~私の瑠璃姫。

「瑠璃姫、瑠璃姫、瑠璃姫」

あなたの名前しか伝えられない愚かな自分を許してほしい。

あなたを疑っていた自分が情けなく、あなたに自分の今の気持ちを伝えられない

馬鹿な自分がいた。

あなたを疑った私に、あなたは私をどう思っているのだろうか?

あなたの気持ちを今聞くことができないのだ。

これ程人の気持ちに心揺れることなんて初めてで

どう対応すればいいのか分からなかったから。

これ以上話すこともできず彼女が気を失うまで抱き、深夜には

清涼殿に戻ることにしたのだ。

だが、そのまま戻ることができなかった。

何故なら、彼女が私の衣を掴みそのまま寝てしまっていたからだ。

初めてのことだった。

彼女が私を欲しているという態度をあからさまに見せてくれたのは。

また体の昂ぶりを覚えたがこれ以上彼女の体に負担を強いてはいけない。

私は彼女のこの意思を尊重してそのまま彼女の寝所を朝まで過ごしたのだった。

 

 

 

 

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