妄想の館

なんて素敵にジャパネスク二次小説(鷹男×瑠璃姫)

藤壺女御物語24

でもあれからこれといったことは見つからず八方塞がりが続いていた。

そんなある日、あたしは眠れなくて藤壺の前の庭先に降りて庭を眺めていたの。

そしてどれくらい経ったのか分からないけどあたしは気になる蝋燭の灯に気づいたの。

こんな時間についている蝋燭の灯。

今は寅の刻、皆が静まっても仕方がない刻。

それなのに、その蠟燭の光がゆらゆらと動いていたの。

誰か起きているんだろうけどこの時間に起きてるなんて気になるじゃない。

その灯に導かれるように近づいたの。

そうしたら一人の女房がいるだけだった。

それだけならあたしはそっと離れたと思ったわ。

でもその女房がしている行為に目が疑ったの。

それはあたしの桂が切り刻んでいるところを見てしまったから

思わず声をかけた。

「あんた何してるの!」

「えっ・・・・・きゃっ」

その女房は大きな声を上げそうになったけどあたしがすぐに手で塞いだので

声はあまり響かなかったの。

「あ、あ、ああ・・・・藤壺の女御様!申し訳ございません」

すぐにあたしに向かって土下座をしたの。

そんな女房に向かってあたしは思わず声を冷たくして言い放った。

「あんたは紅葉!古くから内に仕えるあんたが

なぜあたしの桂を切り刻んでいるのかしら。

あんたあたしに恨みでもあるんじゃないの」

「申し訳ございません。藤壺の女御様に恨みなどあるわけがございません。」

「じゃあこれはどういうことなの?」

「あの、それは・・・」

「あたしに言えないことなの?あたしが邪魔で仕方がないのよね。」

「いえ、決してそのようなことはございませんわ。」

「じゃあどうしてこんなことをしているの。

あんたは梅壺の女御様のスパイだったのね。」

「いいえ、違います・・・いえ、スパイ行為をしているのは私です。」

「やっぱりそうなのね。じゃあどうしてそんなことをしてるの?

理由を教えてほしいわ。」

「えっあの、どうして検非違使を呼ばれないのですか?」

「だってあんたは別にあたしを恨んでいるわけじゃないし

何か理由があるのではないかと思って・・・」

「そうでございましたか・・・・

私には愛する殿方が一人見えました。

その方は私一人だけを愛してくれると約束してくれたのです。

しかし、その方は私を北の方に迎えるためには梅壺の女御様への

協力が必要だと申されました。

ですから、藤壺の女御様には申し訳ございませんが

私は梅壺の女御様のスパイをやる以外なかったのです。

私はどうしてもあの方と結ばれたかったのですから・・・

でもそのおかげで藤壺の女御様がお辛い目に合われたことは

口では言葉に表せきれないほど胸がいっぱいです。申し訳ありません。

私は誰かに非難されるのを待っていただけかもしれません。」

「分かったわ、でもその殿方っていうのは誰?」

「左近の中将様です。」

「ちょっと待ってよ、本当に左近の中将様なの?」

「はい、そうでございます。あの方だけをお慕いしておりますわ。」

 

どういうこと?

たしか小夜という女の相手も左近の中将だったはず。

お互い妻に迎えると言われているみたいだけど

互いのことは納得すみなのかしら?

「あのう、ごめんなさいね。もしかしたらあなたの他に他の女房たちにも

手を出してるんじゃなくて?」

「いえ!そのようなことあるわけございませんわ。

中将様は私だけを愛してくださるとおっしゃいました。

私を北の方に迎えるためには梅壺の女御様に協力して

気に入られて出世を約束することができれば

私に苦労を掛けることもないとそう言ってくださったのに・・・

ですから私はそのために梅壺の女御様に協力しているのです。」

あたしはその話を聞いて、これは梅壺の女御様の企みだということに気が付いたの。

この紅葉と小夜という女房に

このからくりを伝えてあたしに協力してもらえるようにしないといけないわね。

「ねえ、その左近の中将様に頂いた手紙とかはないの?」

「あまり頂くことはありませんがございますわ。」

「ねえ、その手紙を貸してもらえないかしら?」

「何を言って見えるのですか?」

戸惑う紅葉にあたしは左近の中将が丞香殿の女房にも同じことを言って

あたしを貶めていることを伝えたの。

もちろん動揺していたけれどあたしに桂を破いている姿を見られているからか

しばらくして協力してくれることになったの。

そしてあたしはこの手紙を借りてもう一人の騙されている小夜という女房に

秘密裏に接触できるよう手配してもらった。

事前に左近の中将がどんな男なのか鷹男に聞いたり、融に聞いたりして

情報は得たわ。

その男は見た目もよく女性にもてる殿方。

今のところ北の方は迎えていないけれど出世欲は強くプライドも高い様子。

内の融みたいに家柄がよくても何もしないで出世したものは嫌いみたい。

高彬みたいに家柄がよくても実力でのし上がっても信用しないみたい。

あのお人よしの融でさえ苦手だと言ってたわ。

 

でも小夜という女は本当に自分自身に自信があるのね。

確かに容姿は美しくはあったけどプライドが高すぎる。

だからこそ梅壺の女御様に目をつけられたんじゃないかしら。

あたしは紅葉の協力で小夜と対面ができた。

紅葉から受け取った文を見せても小夜は信じられず

信じさせるのにかなり時間がかかった。

そして小夜と紅葉の二人と話して初めは信じられなくて

お互いが左近の中将を誘惑したんじゃないかと罵りあっていたわ。

そりゃあ好きな相手が違う女に騙されていると思ったほうが気が楽だもんね。

自分が騙されていたとは信じたくないわよ。

結局二人はお互いを罵り合っていくたびに冷静さを取り戻していった。

どうも二人に贈った左近の中将の歌がほとんど同じ内容だったみたい。

それから二人は騙されたことに気が付いて代わりに仲良くなっていった。

本当に女はタフよね。

これであたしに対する嫌がらせは少なくなるとして

あの梅壺の女御様がここで引き下がるかしら。

とりあえずは梅壺の女御様に反撃だわ!

 

待ってなさい梅壺の女御!

 

 

 

 

 

梅壺の女御様の企みが分かったあたしは、毎日のように嫌味に来る

梅壺の女御様を待っていた。

几帳の後ろには小夜と紅葉が控えていた。

二人はどうしても直接梅壺の女御様の反応が見たいので

ご一緒させてほしいと願い出ていた。

最近では同じ時刻に嫌味を言いに来るため

藤壺では慣れたように梅壺の女御様の到着を待っていた。

相変わらず梅壺の女御様の登場にうんざりではあったけど

今日はいつもと違うわ。

梅壺の女御様の悪だくみを追及しなくちゃあたしの矜持が受けつかないわ。

あたしはこう切り出したの。

「梅壺の女御様、もうそろそろ悪だくみをお止めしたらどうですの?」

「あら藤壺の女御様、私が何を企んでいるとおっしゃられるのかしら」

「あんたね~あたしを罠にはめようと丞香殿の女御様の女房や

内の女房まで使ってあたしを貶めていることを知らないと思ったわけ?」

「あら、もうばれましたの?使えない女房ばかりだこと。」

なんですって!

そう馬鹿にした梅壺の女御様の言葉にあたしはむかついて大声で叫ぼうとしたの。

でも先に小夜が几帳の裏から飛び出してきたのよ。

「まあ~梅壺の女御様、あなたの言うとおりにしてきた私たちを侮辱なさるなんて

なんてことかしら。ですがあなたの企みは藤壺の女御様は知ってらっしゃいました。

あれだけ酷いことをしてきた私たちを検非遺使に引き渡すことなく

自分の心内に留めてくださいました。

そんな心広い藤壺の女御様とあなたのような心狭い女御様とでは格が違うのですわ!」

「なんですって、あなたみたいに男に騙されるしか能がない女、

あのまま騙されたままでいてくれればいいものを

わざわざ不利な方に味方するなんてお馬鹿ものね。」

「お主上のご寵愛が自分に来ないからと言って

藤壺の女御様を貶めようと画策なさっている割に

誰かさんのところにご寵愛が来ないのも哀れですわね。」

「まあ、なんですって!あなたのような女房風情が私に歯向かえると思いまして。」

「いいのですわよ。私にした振る舞いを丞香殿の女御様にお伝えして

主上に伝えていただくだけですわ。

ただでさえご寵愛されている藤壺の女御様の頭痛の種であるあなた様の仕向けたこと

主上がお知りになったらどうなさるのかしら・・・

「あなた、分かっているの?

丞香殿の女御様が藤壺の女御様に協力なさるわけございませんわ。」

「あら、私たちの女御様はあなた様と違って心が狭いお方ではありません。

不当な手段を画策なさったあなた様のことを

女御様はお許しになることはなさいますまい。

私たちを巻き込みなさったのですから今度は私たちがあなたさまの敵になりますわ。

覚悟なさってください。」

「ふん」

梅壺の女御様は顔を真っ赤にして藤壺を出て行った。

「小夜さん、大丈夫なの?あれでも女御様よ。

あなたの身が危なくならない?もしかしたら捕まるかもしれないし。」

「くす、大丈夫でございますわ。私を敵になさったあの方が悪いのですわ。

私たちは本来罪に問われなくてはなりません。

ですが私たちに命令したのがどなたなのか?

公の場に知らせたらどちらの身が危ないのかわからない方ではございません。

指示なさったのは左近の中将様ですからこのことは公にはされないでしょうね。

私たちが黙っていれば。」

「ははは・・・」

怖い女房だわね。

まさかこんな展開になるなんて。

でもこの女房が今までの様な攻撃をしないと言ってくれただけましね。

あ~この先はどうなるのかしらね。

小夜のおかげであれから嫌がらせはなりを潜めてくれた。

梅壺の女御様が入内なされる前の様な他の女御様達との付き合い。

そしてあんなに毎日来ていた梅壺の女御様からの訪問もほとんどなく

平穏だな~ってしみじみと感じていたの。

藤壺の女房達にも笑顔が現れて雰囲気もいいしこんな状況が続くといいんだけどね。

あたしは梅壺の女御様からの嫌がらせもなくなり気分もよくなっていった。

あの梅壺の女御様もこれで懲りたんだと楽観視していたのよ。

 

 

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