妄想の館

なんて素敵にジャパネスク二次小説(鷹男×瑠璃姫)

藤壺女御物語31

「左近の中将様のことですか?」

「ええ、なんでもいいから知っていることを聞きたいんだけど」

「そうですわね、とても美男子で男らしくてああ~女御様には言えないわ~」

「あのね、小夜、そんなことを聞いているんじゃなくて

どんな家柄とか性格とかそういうことよ。」

「まあ~藤壺の女御様は相変わらずせっかちでございますね。

ふふふっ、まあ~よろしいですわ。左近の中将様は梅壺の女御様の母方の弟君の子で

梅壺の女御様からしたら従姉妹にあたりますわ。

能力は高くてあの年で中将の地位を獲得なさったのですわ。」

「もしかして、左近の中将は式部の卿の宮様の子息なの?」

「ええ~そうでございますが実は実子ではないのです。

式部卿の宮様には跡継ぎが御生まれにならなくて

そんな時左近の中将様のご両親が流行病でなくなり、心配なされた

式部の卿の宮様がお引き取りになられたのでございますわ。

どういった経緯でそうなったかはわかりませんが仲の良い親子ですわ」

「そうなの?でも梅壺の女御様と幼馴染ではあるけど従兄妹同士でもあるのね。

それだったら二人が仲良くてもしかたがないか。」

「ええ~そうなのですわ。

私は騙されてから実はあの二人のことが気になったのでございます。」

「気になったというのはどういうことなの?」

「時々中将様は他の女の香が匂うことがあったのです」

「だって中将はうちの女房の紅葉と同じ時期に付き合って」

「それはそうなのでございますが、紅葉さんとはつけている匂いが違います。」

「でも香は毎日気分によって変えるものよ。」

「それもそうですがいつも左近の中将様が

夜にお越しに見えるときの匂いが違うのです。」

「匂いが違う。」

「なんだかあやかしの匂いと申しましょうか。

一度も嗅いだことのない変わった匂いなのですわ。

なんだかその日はどうでもいいようなとても気持ちがいいような匂い」

「一体どんな匂いかしら」

「実は中将様以外でその匂いの香を嗅いだことがあります。」

「それはいつなの?」

「梅壺の女御様が清涼殿に召された時のことです。

すれ違った折似たような匂いを嗅いだからなのです。」

「え!」

「滅多に梅壺の女御様をお主上はお召しになりませんがあの時ですわ。

図々しくも日が昇った時に自分の局に戻られた時がございましたでしょう。」

「ちょっと待って。それって梅壺の女御様が御子様をお腹に宿す前のこと?」

「ええ~そうでございますわ。あの時はすごい噂がたちましたわね。

昼時まででしたから。」

たしかあの日、あたしも梅壺の女御様から立ち籠る匂いに気づいたわ。

妖しい嗅いだこともない匂い。ただそれだけだったら問題はないけどまさか

あの左近の中将の香と似ている特殊な香。

同じ香を使う人は多いわ、でもその人独自の香は存在する。

その人しか調合できない香がある。

でもそんな特殊な香をあたしは梅壺の女御様からあの日以外嗅いだことがない。

そして左近の中将も夜しかつけない香。

何かがひかかる・・・

藤壺の女御様、どうなさりましたか?」

「ごめんなさい。ありがとう、変なことを聞いたわね。

小夜にとっては話したくないことなのに」

「あら、構いませんわ。あんな男ごとき、今はそれよりも違う殿方が素敵で」

「あっ、そうなの悪かったわね。ここまで呼びつけて。」

「いいえ、私で役に立てるなら構いませんわ。敵方の女御様ですけど

梅壺の女御様よりほんの少しだけましですもの。」

「そう、ありがとう、もういいわ!」

小夜は相変わらずね。敵の女御なら身分が高くてもお構いなしなのね。

女房達の戦いもすごいのね。思わず納得してしまったの。

あれからあたしは色々考えた。

でもこの二人の香が同じだとしても何に繋がるかもわからない。

まして融に左近の中将が近づいたことさえも分からず

そこから考えが立ち止まってしまったの。

ただの考えすぎということもある。

でもあたしの中で警鐘が鳴り響いているの。

あたしは色々な女房たちにもっと二人の情報を調べようと思い

女房装束で色々聞いてみたの。

そしたら吃驚するような噂があったの。

それは左近の中将と梅壺の女御様がよく会っていたということ。

いえ、それだけではなくこの二人が妖しいのではないかという噂。

もちろんこんなことは表ざたにできることではなくて

ほんの一握りしか知らないこと。

ただのやっかみといわれる類の噂だったの。

梅壺の女御様はお主上に相手にされないからそこに左近の中将が慰めて

いい仲になったのではないかという噂をしていた女房がいたこと。

でも、梅壺の女御様がご懐妊の今そんな噂が流れたら謀反だと言われても仕方がない。

その噂を立てた女房はもちろん解雇されている。

あたしはふと幼馴染の吉野の君を思い出したの。

昔あたしに可愛らしいプロポーズをしてくれた吉野の君。

幼き頃に亡くなったと聞いていたのにあたしの前に現れた。

そしてもう一度あたしを求めてくれた。

でもあたしは女御であり鷹男の存在があった。

だから吉野の君の手は握らなかったの。

まさかあの二人にもそんな関係があったのだとしたら・・・

いえ・・・そんなことあるわけないわ。

だから大丈夫なのよ。

でも・・・

何かが裏で起こっているのではないかという不安。

心の中で気のせいだと思うようにしているけれど別のあたしが騒いでいるの。

こんな気持ちが続くことについに我慢の限界がきて

あたしは鷹男に梅壺の女御様の香について聞くことにしたのよ。

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