藤壺女御物語43終
あたしたちは吉野まで来ていた。
初めての外出にワクワクしてきた。
それもあたしの子供時代に育った吉野ですもの。
感慨深いは~
こうして京から時間をかけて吉野についたんだけれど
さすがにくたくたで吉野の里を見るのは次の日になった。
そうしてやっと外に出れた。
満開の桜のその美しさと言ったら言葉に出ないほどだった。
天気がすごくよくて雲一つない絶好の景色!
子供たちはあっという間に外を駆け出していく。
家人たちが慌てて後を追っていく姿に私は笑ってしまう。
これほどの美しさにじっとすることなんてできないでしょう~
「瑠璃姫」
「鷹男」
あたしの隣には鷹男がいる。
その時だった。
「瑠璃姫」
吉野の君があたしたちに会いに来てくれたわ。
そうして吉野の君の手の中には一輪の菫の花が咲いていた。
「瑠璃姫どうぞ」
あたしは懐かしくてその花を受け取ろうとしたその時
パっ!
?????
なんと菫の花は鷹男の手の中に納まっていた。
「吉野宮はまだ忘れてないのですかね~ふふふ」
「お主上、この懐かしの吉野での思い出を踏みにじるつもりですか?ふふふ」
二人がにらみ合っているわ。
吉野の君も冗談だろうけど、菫の花は吉野の君がプロポーズしてくれた証。
二人でじゃれあっている姿に笑ってしまう。
もしかしたら、吉野の君が最初から親王として認められていたら
三人でここで遊んでいたのかもしれない。
そう思うとなんだか嬉しくなってくるわ。
そんな時だった。
「吉野の君!遊んでたもうれ!」
「姫宮様!」
姫宮が吉野の君に抱き着いて吉野の君は姫宮を抱きかかえた。
そうしたら桜の花びらが舞い散りその幻想的な姿にあたしは感動してしまった。
ああ~なんて美しいのかしら。
あたしにそっくりの姫宮と成長した吉野の君が一緒にいる。
涙が出てきてしまう。
「瑠璃姫?」
鷹男があたしの涙に吃驚してしまっているわ。
「吉野の君は生きていてあたしと鷹男の子供を抱きしめている姿に
ついね、涙が出てきてしまって嬉しくて!」
「そうですね、吉野の宮が姫宮を抱いているのは父親として複雑ですが
瑠璃姫にとってはかけがえのない思い出になるのでしょうね。」
「うん!ほんとここに連れてきてもらえてよかった!
鷹男愛しているわ!」
「私もですよ」
こうしてわれらの瑠璃姫は三人の子宝に恵まれ中宮そして皇后になり
いつまでもいつまでも幸せに暮らしたのでした。