好きなのに~渦巻く嫉妬の嵐13
僕は最初その噂を耳にした時嘘だと疑った。
瑠璃さんと東宮様は二人とも本当に愛し合って結ばれたのだから。
だから二人の恋のために僕は瑠璃さんを諦めたんだ。
それなのにどうしてもう瑠璃さん以外に東宮様と噂される女性がいるだなんて
くだらない噂があるんだ!
僕は信じられなかった。
その話を僕に教えてくれた公達は特に東宮様の女性関係に疑いは抱かなかった。
元々東宮様は色々な女性を渡り歩いたプレイボーイだし
この貴族の世界では女性の噂が多いのは常識のことだったから。
でも・・・・・でも僕にはそれが許せない事だったんだ。
瑠璃さんを愛し幸せにしてくれる。
そう信じていたからこそ東宮様に瑠璃さんを渡したというのに!!!!
僕はその噂が真実かどうか聞きまわった。
いろいろな人に聞いて回った結果
東宮様は自分の乳母の子である楓という女に通っているらしい。
その上その女性が東宮様の本当の想い人だというのだ。
その女性は更衣にも上がれない程身分が低い人だった。
だからか二人の関係は昔から噂はされていたがそれが本命かどうかは誰も掴んでいなかった。
それが今になって浮上しただなんて・・・
僕は沸々と怒りの気持ちがわいてきてしまっていたんだ。
瑠璃さんはこの噂を知っているんだろうか?
この噂を知ったら瑠璃さんはどれだけ苦しむんだろうか?
多分まだ瑠璃さんはこの噂を知らないんだと思う。
この噂を聞く直前、僕は瑠璃さんに世間話をしに麗景殿に訪れていたんだから。
その時の瑠璃さんはとても幸せそうで僕は自分が身を引いたことに満足していたんだから。
それをすぐに覆されるなんて夢にも思わかった。
瑠璃さんお付の女房達は必死でこの噂を瑠璃さんの耳に入れないように頑張っているんだろう~
でもいずれ瑠璃さんの耳に入るだろう。
その時僕はどうしたらいいのだろうか?
あれから僕は瑠璃さんに直接会うことができなくてずっと麗景殿に行かなかった。
あれからまもなく楓という女性が麗景殿の客人として迎えられたことを他の人間から聞いて知った。
東宮様の気持ちがサッパリ理解できない。
どうして愛する女性一人を大切にしないのだろう。
僕だったら愛する人を悲しませるようなことなんて絶対にしないのに!
瑠璃さん一人だけしか愛さないのに!
あの庭で瑠璃さんを見かけた。
静かに身動きもせず初めは人とは思わなかった。
それほど人の気配がしなかったから。
ただ一点を見据えて何かを考えていたんだろう。
東宮様のことを・・・・
近づいてからやっと瑠璃さんだと分かった。
その悲しそうな姿。
明りも何もない月明りだけの暗い外では瑠璃さんの表情は伺えなかった。
涙を流していたのか、どんな想いをしていたのか僕には分からない。
ただ分かったのは瑠璃さんが嘘を言っている。
それだけだった。
東宮様との悪い噂を否定する瑠璃さん。
僕は騙されないよ。
どれだけ上手い事口で言っても瑠璃さんがとても苦しんでいることは分かっているんだから。
瑠璃さんは僕に嘘を言ってすぐに僕の前から消えた。
僕はその時追って瑠璃さんを抱き締めたかった。
瑠璃さんの苦しみを分かち合いたかった。
瑠璃さんの苦しみを救いたかった。
なのに僕は動かなかった。
今追いかけて行っても瑠璃さんは僕からすり抜けて行くだろう。
そう直感していたんだ。
瑠璃さんをずっと何十年も見続けている僕の勘がそう囁くんだ。
今動く時ではないのだと。
僕はもう自分の気持ちを諦めるのは止めた。
自分の気持ちに素直になろう。
瑠璃さんが嫌だと言っても僕は瑠璃さんを東宮様の元から救いあげようと思う。
今度こそ僕は瑠璃さんを諦めない。
瑠璃さん少しの間待っていてくれ。
少しずつ少しずつ瑠璃さんを救い出していくから。
待っていてくれね・・・・・・・・・・・・・
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