藤壺女御物語37 間章2
そんなある日のこと、こんな話題になってしまったのよ。
「ねえ~そういえば三条さんはどこの出身なの?」
「ああ~そういえばきいたことがなかったなあ~」
「あのう、内大臣様にここを紹介されたんですけど。」
「そうだよなあ~」
あたしの噂かあ~変な噂しかないだろうけどどんなのだろう。
公達たちと女房の噂は違うのかしら?
「何か藤壺の女御様にあるんですか?」
「いやあ全然。たださ、藤壺の女御様に今は寵愛が続いているだろう?
周りがかなり不思議がっているんだよなあ~」
「そうそう、藤壺の女御様の容姿は十人並みらしいしさ~
なんで寵愛が高いのか分からないんだよなあ~まあ~今上帝が通えるのが
藤壺の女御様だけしか今はいないだろうけどさ」
「それはいえる、あの女御様の嫌味でさえ
受け流すくらいの図太い神経の持ち主だろう。他の女御様はあと丞香殿女御様一人。
まだ病で臥せて見えるし」
「あれ?桐壺の女御様は!?」
「しっ!桐壺様は知ってるだろう?下賜されただろう~」
「ああ~」
「そうだよなあ~丞香殿の女御様がお元気になったら寵愛が戻るだろうし
そうなると内大臣様よりも右大臣様派になったほうがいいのかな?」
「でも丞香殿の女御様が元気になるかはわからないし」
「だったらあの噂は決定に近いのか?」
「あの噂って何だ?」
「春日の大納言様の大姫様の入内の噂だよ。」
「へえ~もうそんな噂があるのか?」
「でも春日の大納言様には姫様がいらっしゃらなかったんじゃないか?」
「なんでも北の方の姫君じゃなくて妾の姫君をわざわざ探してきて
二人の養子にして春日の大納言家の姫として入内させるようだ。」
「まあ~このまま女御様の数が少ないから誰かは入内しないといけないもんな~」
ええ~もう違う女御様の噂が流れているの?
最近事件があったばかりなのにまた新しい女御様?
もう女御同士の争いはしたくないわよ。
春日の大納言といえば高彬の父上、右大臣家の長男じゃない。
高彬と違って才がなくて家の力で大納言になった能力もない男じゃない。
そこの姫ですって!
どうみても梅壺の女御さま見たいな野心がありそうな感じ。
嫌だなあ~憂鬱になってきたわ。
「・・・・・でね三条さん」
え?
「はい」
「やった~三条さんは誰も恋仲な人はいないんだあ~」
は?何を言ってるの?考え事をしていたから話を聞かずに返事をしちゃったわよ。
「あのう~なにかあるんですか?」
「いやあ~三条さんに誰も恋人がいないんだったら
僕が立候補しようかな~って思って」
「ずるいぞ、お前!俺じゃダメかな?三条さん」
「俺だったら君しかいないよ」
沢山の公達たちに立候補されてびっくりしちゃったわ。
でも言っておかないとね。
「ごめんなさい、あたし実はもう結婚してるんです。
だから皆さんとはお付き合いできません」
「「「「「え~~~~~」」」」」
皆が唖然としていたけどあたしはもういい時間だったからその場を離れたわ。
皆がどれだけショックを受けたか知らずに立ち去ったのよ。
あたしは先ほどの殿方との話よりも新しい女御様のことでいっぱいだった。
また新しい女御様かあ~
鷹男を独り占めするのはできないことは分かるけれど今度こそ
新しい女御様とはうまくやっていきたいと思う。
それからしばらくしてまた校書殿に戻った時のこと。
なんだかあたしが入っても
あたしに気が付かなくて何か、話し合いをしているようなの。
なんだろう?結構深刻な話し合い?
沢山の殿方たちが集まって何かを話しているみたい。
まさか何かあったのかな?
あたしは興味津々で近づいて行ったの。
「なあ~三条さんは人妻だったの・・・誰か知っていたか?」
「「「「「知るか」」」」」
「だよな~あんないい子誰が妻に迎えたんだろうな」
「そうだよ、俺狙ってたのに」
「「「「「うん」」」」」
「誰だ!そんな羨ましいやつは誰か聞いたことはないか?」
「あるわけないだろう。ここにいる奴は誰も知らないはずだ。」
「だよな~三条さんを妻にできた羨ましいやつはどこのどいつだ!」
「そうだそうだ!」
「そいつを見つけたら袋叩きだよなあ~」
「そりゃあ~そうだろう!」
「だったらさ、三条さんの結婚相手を見つけようではないか!」
「そうだ、皆探そう」
「「「「「お~!」」」」」
何をこの人たちは言ってるの?
「あの?」
「「「「「なんだ、俺たちは忙しいんだ!?」」」」」
「あなた達いったい何をしているの」
「「「「「三条さん!」」」」」
「あたしの結婚相手なんて知ってどうするの?」
「いえ、別に何も。ただ知りたいな~と思って」
「そうだよな~」
「ああそうだよ。あはは・・・」
「で、三条さんの結婚相手は誰ですか?」
「え!」
「三条さんが選んだ人だから素敵な人なんでしょうね」
「ええっ!?あのっ」
かあ~~~恥ずかしいじゃないの。
鷹男のことなんてこんなところで思い出させないでよ。
あたしがもじもじしていると皆がいろいろ聞いてくるのよ。
「相手は誰なんですか?」
「どんな官位のものですか?」
「優しくされているんですか?」
「三条さんを幸せにしてくれている人ですか?」
「いやなら別れてしまえばいいのでは?」
「「「「「そうだ、そうだ!」」」」」
「「「「「なんなら俺たちが三条さんの結婚相手に立候補しますよ!」」」」」
「ほほう~お前たちは私の愛するお方を奪おうという気か!」
「「「「「?????」」」」」
「鷹男!あんたなんでここに!」
「お主上、そちらに行ってはなりません。」
「「「「「お主上?????」」」」」
がばっと一斉に公達たちは頭を下げた。
「そなたらは私の愛する女御を私から奪う気なのだな。」
「いえ、そういうわけではございません。そんな女御様を奪うだなんて
恐れ多いことを。考えたことなんてありません」
「しかし、そなたらが私の愛する女御を奪うと今言っていたではないか」
「そのようなことはいっておりません」
「ではそなたらが今三条というものの夫から奪おうと言っていたのは間違いはないか」
「それは・・・その通りでございます」
「ほお~いい度胸だな。三条とは私が一番愛する女御だがな!」
「「「「「は?」」」」」
「瑠璃姫あなたは一体ここで何をして見えるのですか?」
「あははっ鷹男。見つかっちゃったわね」
「あははではありません。そのようなお美しいお顔を他のものに見せるだなんて
何を考えているのですか。だからあなたにいらぬ輩が近づいてくるのですよ。
瑠璃姫はお仕置きが欲しいみたいですね」
「えっ!お仕置きなんて嫌だなあ~鷹男、許して!」
「駄目です、さあ行きますよ。
こんなオオカミの巣窟になど二度と来ることは許しません。
お前たちこのことは秘密裏にするように。
お前たちが私の女御に手を出そうとしたことは~~~~~~
はらわたが煮えるほど怒りが出てくるが仕方がないから内緒にしてやる。
だがもう女御の顔を浮かべるなよ。この方は私だけの人なのだから」
そうしてあたしは鷹男に無理やり連れていかれてお仕置きをされることになったの。
鷹男の嫉妬であたしは丸三日外へ出ることもできず
鷹男に愛され続けて体が動かない状態なのよ。
あ~もうあそこに行くことはできないわ。
当分お散歩にでさえいけなくなってしまったのよ。
鷹男の愛は重くそれが嬉しくもあったのよ。
あたしは幸せだわ!