妄想の館

なんて素敵にジャパネスク二次小説(鷹男×瑠璃姫)

藤壺女御物語34

あれからあたしはどれだけ日が経ったのか分からない。

そんなに時間は経ってないのかもしれない。

「にゃあ~」

猫?

何でここにいるの?

それよりもここはさっきの塗籠と変わらないわ。

変わらず力が抜けていたけれど、人の気配に気づきあたしは睨みつけた。

そこにはやはり男が笑みを浮かべあたしの前にいたの。

「何も知らずにいれば命まで取るつもりなどなかったのに

あなたは変なところで賢いようですね。」

「あんたは左近中将よね!あんた何をしているのか分かっているの?

あたしはこれでも女御よ。そんなあたしを閉じ込めるだなんて大罪人よ!」

「いいえ、大罪人はあなたの方ですよ。あなたはこの麻薬である香を

梅壺の女御様に使った犯人。麻薬を使う人でなしではありませんか?

ああ~梅壺の女御様はお可哀そうに、体調を御崩しになった。

あなたは帝のお子様でさえ殺そうとしたのです。

なんて恐ろしい所業でしょう。」

「何を馬鹿なことを、私が女御様に使っただなんてどこにそんな証拠が。

まさか、これが、そうなのね!」

あたしの手の中に香袋があった。

ここに検非遺使がいたらあたしはお縄になるしかないわ。

やっぱり罠に嵌められてしまった。

だったら、鷹男がくるまでの時間稼ぎをするしかないわ。

「左近中将様、あんたは梅壺の女御様と恋仲だったの?」

「何を馬鹿なことを!

あんなヒステリーな女とどうして私が恋仲にならねばならないのだ。」

左近中将はあたしの話に食いついてくれた。

「だって、幼馴染だって小夜から聞いたから。」

「小夜からだと!女はこれだから嫌なんだ。すぐに何でも話す。

だが梅壺の女御様と恋仲だと思われるのも勘弁していただきたい。

あんな自分のことしか考えていない女、帝が手を出さないのもよくわかる。」

「なんであんたはそのことを知っているの?」

「そんなのあの女が帝からお情けでさえかけていただけないと何度も泣きつくからだ。

抱きたくもないのに、あの女が言うから仕方がなく抱いたに過ぎない。」

「じゃあ本当は梅壺の女御様はあんたの子を身ごもっているのね。」

「そうですよ。梅壺の女御の御子が生まれその子が東宮、いえ次代の帝になり

私の血が流れる子がこの京を支配するのです。素晴らしいことではありませんか?」

「あんた何言ってるの?それは沢山の人をだますことになるのよ。

それなのに何も感じないの?」

「今権力があるものは実力もないのに家柄だけで威張り散らしている。

そんな人間たちが上に立つから実力ある者たちは出世できないんだ。

馬鹿な貴族に仕え一生を台無しにする。愚かな人生だと思いませんか?」

そんなの勝手だわ。本当に実力があるなら鷹男は重用してくれるもの。

「それであたしをどうするつもり?」

「あなたにはここで死んでもらいます」

「なんですって!」

「あなたはここで香の使い過ぎで死んでもらいます。弟君にもね。

真実は謎のまま。」

「あんた、まさか融に何かしたの?」

「別に何もしていませんよ。結姫にあなたの弟君を誘惑するように

頼んだだけですよ。」

「融は今どこにいるのよ!」

「あなたはもう知って見えるのではないですか?」

「じゃあ、やっぱり梅壺の女御様のもとにいるのね。」

「あなたの弟君を通わせていることで梅壺の女御様にお叱りを受けて

悩んでいるという文を結姫に書いてもらいそれを届けたらあなたの弟君は

すぐに飛んできましたよ。弟君はお優しいから梅壺の女御様に結姫を

怒らないように言ってもらうよう仕向けました。

お酒を飲ませて眠らせそのまま源大納言邸に軟禁していますよ。

今は起きて接待を受けています。

本人は気づいていませんけどね。

あなたを捕まえたことでもうそろそろあちらも動くはずです。

さあ話が長引きましたね。あとはあなたを殺すだけ。」

「ちょっとあんたたちは最低よ!人の命を何だと思っているの?やだ~鷹男!」

もうあんたと会いないかもしれないと覚悟を決めたその時!

 

「にゃあ~」

と鳴き声とともに猫が中将に襲い掛かる。

「ぎゃあ」

その時だった。

「瑠璃姫!」

大きな音とともに鷹男と沢山の検非遺使が部屋の中に入ってきた。

「右近の少将高彬、すぐに左近の中将をとらえよ。」

「は!」

あっという間に左近中将はお縄になったの。

「何故だ!何故検非遺使とお主上が!」

「ここにいる理由を大罪人に教える必要があろうか?

お前の企みはここにいる皆と一緒に聞いていた。すべて白状してもらうぞ!」

「ふざけるな、何故私がとらえられなくては!」

「左近中将!梅壺の女御と企みお主上の御子様と偽ろうとした罪!

大罪人ですぞ!」

「高彬!この大罪人を連れていけ!」

「かしこまりました!」

言い逃れはできないのに未だに大騒ぎをしている中将にあたしは呆れてしまう。

そしてあたしは放心状態のまま鷹男に抱きしめられていた。

 

「瑠璃姫大丈夫ですか?なにもされていませんか?

あなたにもしものことがあったら私はどうしたらよいのか。

もっと早くにこちらに伺うべきでした。」

「ううん大丈夫!間に合ったから!」

あたしたちはお互いを確かめ合いそしてあたしは藤壺に戻ったの。

そして小萩にねぎらいの言葉をかけた。

鷹男は大事件の処理のためすぐに政務に戻っていった。

 

 

 

 

あれから後宮は大混乱になった。

あたしが左近の中将と対峙する前、小萩はあたしの命で鷹男に知らせてくれて

あたしを救出しようとしたそうよ。

その少し前、夏が助けた女房が目を覚まし驚きの発言をしたの。

梅壺の女御様と中将の企みを。

彼女は偶然二人の話を聞いてしまい桂川に落とされ危うく殺されかけた。

その話を聞いて中将様を監視しそこであたしを見つけて助けてくれた。

思い返すと前代未聞の事件だった。

不義の御子を擁立して次期帝に据えようとするなんて。

連判状まで出てくるなんてどこまで計算されていたのかしら。

すぐに融はあの後助けられた。

でもあのぼんくらは梅壺の女御様と面会するまで自分が場所を変えていたなんて

知らなかったようで検非遺使が乗り込んでも全くわかってなかったんだから

あのバカは騙されても気づけないなんて情けない。

でも無事でよかった!

そしてこの事件の張本人の梅壺の女御様は

今は軟禁されて詳しい事件を調べられているところよ。

そして不義の御子ということは寝耳に水だった源大納言は二人の企みを

知らなかったと大騒ぎしているみたい。

でもこんな大事件を起こしたんだもの一族郎党すべて処分されるだろう。

この事件を全く知らなかった式部卿の宮様はさらにお可哀そうだと思うわ。

事件を起こすとその張本人だけじゃすまないから。

何も知らなくても知らないことが罪になることもある。

だから事件が発覚してよかったと思うけど複雑な気分よ。

それぞれ何か思うことがあるけれど他の人の人生まで狂わせてしまう。

この事件は解決してもあたしの心に深い傷を作ることになるの。

 

結局一度もあたしは梅壺の女御様と仲良くすることもなく

後宮争いはこれで勝負がついたの。

あたしはもうすぐ生まれてくるであろう梅壺の女御様の御子がかわいそうでならない。

両親の権力争いの道具として生まれてくる存在。

御子様にはなにも罪はないのに生まれるべきではなかった子として

初めから罪の烙印を背負って誕生するしかないのね。

あたしはただただその御子様が無事に生まれて今度は権力も何もない場所で

幸せに暮らせることをお祈りするしかなかったの。

こうして梅壺の女御様達による陰謀は終結に向かった。

まだ詳しいことは分かってないけれど段々明るみになるでしょう。

 

 

あれだけの大事件はある人主導の元暴かれることになった。

そのかたのおかげで数々の証拠やからくりが解決することになる。

 

 

この件にかかわった者たちは全員京から追放、隠岐佐渡島流しにされる予定よ。

あたしは被害者であったけれど鷹男が心配だった。

だって寵愛はなかったとはいえ自分の女御がおこした事件ですもの。

そして左近の中将はじめ、彼らの味方になった臣下たち。

それも自分たちの野心のために・・・

案の定鷹男は顔をしかめて考えことをしていたの。

あたしはふわっと鷹男を抱きしめて鷹男を慰めた。

「鷹男大丈夫よ。あなたの苦しみはあたしも半分貰うから。

二人で一つ。だから一人で悩まなくてもいいのよ。」

「しかし、瑠璃姫。私が帝らしく梅壺の女御になさけをかければ

このような事件にならなかったとそう思いませんか?」

「鷹男はそれでもよかったの?梅壺の女御様ともっと一緒にいたかった?」

「そんなわけはありません。私は瑠璃姫と毎日共に過ごしたかったんですから。」

「ふふっ、ありがとう鷹男。過去を振り返るのもいいかもしれないけど

それに引きずられずに何がいけなかったのか反省しながら前を向きましょう。

だから鷹男元気を出して」

「瑠璃姫・・・」

あたしたちは抱き合いながらこれからも色々な後宮の事件が起ころうとも

二人で助け合って乗り越えようと固く誓ったの。

あたしたちは夫婦なのだから!

 

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